人気サッカー漫画「キャプテン翼」の世界が、現実に生まれた!?

それは天皇杯4回戦の鹿島-広島戦の延長後半だった。1点をリードして迎えた同12分、鹿島FW土居聖真が懸命につなぎ、MF永木亮太を経て日本代表MF三竿健斗がボールを受け取った。そのとき、目の前にはスペースが空いていた。だが、最初に選んだのはドリブルだった。

「受ける前からシュートするイメージはあったけど、最初にボールの置きどころがあまり納得いくところでなくて…」。

シュートのタイミングがワンテンポ、遅れた。相手DFが目の前に迫った。覚悟を決めて右足を振り上げた。

「もう1回触ったら取られそうだったので、変な取られ方するより、ごちゃごちゃってなった方がいいかなって思った」。

ペナルティーエリアのライン上。シュートに行った。相手の方がわずかに先にボールに触れていた。それでも構わず、振り抜いた。その弾道は、相手のクリアを蹴り返した形になり、威力を増したか、ゴール右に突き刺さった。

「キャプテン翼と同じです」と三竿健は笑った。まるで、漫画内のキャラクターで中国代表の肖俊光が得意とする「反動蹴速迅砲」だった。相手のキックを蹴り返して威力を倍増させるシュートで、ペナルティーエリア外からはゴールを許さないGK若林源三からゴールを奪ったことでも知られる必殺技だが、現実でやってみせた。それが三竿健の今季初ゴールだった。

「打ったら入っちゃいました。もう1つ早く打ちたかったんですけど、体勢的にちょっと厳しかったので、持ち直した。あとは気持ち。パワーで打ちました」。試合を決める駄目押しゴールにもなり、歓喜の輪が生まれた。

直近のJリーグから中2日。今月だけで7試合目を数えた広島戦。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)やルヴァン杯でも勝ち上がり、今後も超過密日程が続く。だが、三竿健は歓迎する。「こういう日程だからこそ、より一丸となれると思っている。どんどんどんどん勝って、日程を組んだ人を見返したいなと思います(笑い)」。もちろん、気を緩めることはなかった。「まだ僕たちは何も勝ち取っていない。最後につらい思いや、みんなで頑張ったというのが報われれば」。

リーグでも、一時は15位まで落ちた順位が暫定ながら4位に浮上した。鹿島の伝統の粘り強さが増してきている。