浦和レッズが鹿島アントラーズに逆転勝ちし、勝ち点45の5位に浮上した。FW武藤雄樹(29)が、逆転弾を含む2得点の大活躍だった。鮮やかな2発を生んだ陰には、「組長」の存在があった。

迷いなく左足を振り抜いた。1-1の後半15分。ペナルティーエリアやや外でパスを受けると、反転してDF1人をかわした。「ずっとあの位置でのターンは感覚がよかった」。前を向いた瞬間に見えたゴール右のコースへ放ったミドルシュートが鋭く決まった。

逆転に成功すると、試合終了間際にも圧巻の1発。カウンターからFWナバウトのパスを中央で受けると、約40メートルを1人ドリブルでペナルティーエリア内まで突進した。DF3人を振り切って放ったシュートはGKに当たってそのままゴールへ。チームメートから「メッシだメッシだ」とからかわれるように祝福された。「キャリアを振り返っても、あそこまでドリブルしてゴールはない。大事な試合で出せて良かった」と振り返った。

ハーフタイム、背中を押された言葉があった。「武藤。足、振り抜け」。何度も声をかけたのは大槻毅ヘッドコーチだった。前半、シュート機会でも切り返してつなぐ武藤を見ての言葉だった。「チャンスあるぞ」。今年4月には暫定監督としてチームを率い、こわもてとオールバックヘアの姿が「組長」と呼ばれて愛された大槻ヘッドコーチ。変わらない気持ちのこもったハッパに武藤も応えた。

前節まで勝ち点差4で3位にいた鹿島に勝ち、来季のアジア・チャンピオンズリーグ出場権獲得も射程圏内にとらえた。残りリーグ4試合は東京、札幌など上位勢との対戦が待つ。殊勲の武藤は「こういうゴールで自信をつけて、上を蹴落としたい」と、力強く語った。