湘南ベルマーレFW梅崎司(31)が、17年まで10シーズン、プレーした浦和レッズ戦で、大分トリニータ時代からの同期のGK西川周作(32)の壁を破り、古巣から初ゴールを決めた。試合後は「周作から何としても決めたかった」と振り返った。

梅崎は前半20分、自陣ペナルティーエリアからMF杉岡大暉が蹴ったボールを、センターサークル付近にいたFW山崎凌吾が頭で左サイドに落とすと、ハーフウェーライン手前で受けて一気に加速。並走したDF森脇良太をかわすと、右足で決めた。「森(森脇)は前に強い。逆手に取ろうと思って逆を突き、スペースを使えた。立ち上がりでインターセプトされたシーンがあって、どこかで裏返して一気に入れ替わろうと思った」と、森脇を振り切った場面を振り返った。

森脇を振り切った後、迫るDF茂木力也もかわして西川と向き合うと、トーキックでシュートを打った。「周作は、高校時代からずっとやっているので何としても点を決めたかった。もう1こ、前で打てたんですけど(ボールを)もう1こ、運べるなと判断を変えて、足裏で転がして運んで、タイミングを外した」。約50メートルを一気に駆け抜けた中でも、湧き出たゴールのアイデアで、かつての盟友の壁を打ち破った。

古巣相手の初ゴールについては「もちろん、うれしいですけど、それよりも自分たちが置かれている立ち位置、残留を目指す中で、勝たなきゃ状況の方が強かった」と残留争いへの思いの方が強かったと強調。「佳境に入ってきて、ここに来た意味を問いただした。もっと、もっと仕掛けて、自分がゴールを狙っていくんだという意識を先週、今週と練習で植え付けていけたことがゴールにつながった」と分析した。

さらなる成長を誓い、不退転の覚悟で浦和から湘南に完全移籍した。「結果が1番、分かりやすいもの。過程の中で成長している実感はありましたけど、前目の選手としてゴールが1番。そこにこだわってきた。形になったのはうれしいし、意識が変わることが出来た」と自らの成長をかみ締めた。

浦和と初めて対戦した4月28日のアウェー戦は、かつてのホーム埼玉スタジアムのピッチに後半42分から立ち7分間のプレーだった。それから7カ月が経過したホーム戦では先発し、ゴールを決め後半31分までプレーした。「(アウェー戦は)残りちょっとしか出られなかった。もっと成長したいという思いで来た。湘南(への移籍)は新しいサッカーを学ぶ機会だったし、もっとアグレッシブな昔の自分と戦い、呼び覚ましてくれた。スタメンを張れる機会も増え、慣れてきている感覚もあったので、今日はレッズ相手に自分…ベルマーレの梅崎司を見せたかった。その思いをチーム、仲間と体現できた」と感慨深げに語った。

曹貴裁監督(49)も会見で、梅崎について熱く語った。

曹監督 ちょうど司には控室で話した。18、19で(福島の)Jビレッジで見た時、きかん坊で強気で前に行く力が選手だと思った。大分でトップに上がっても、非常にいいパフォーマンスで(イビチャ)オシムさんの代表に呼ばれ、グルノーブルに行って世界に出て行く選手になると期待して見ていたが、浦和でケガをした。表情が、ちょっと変わったと思った。2年後、縁があって来てもらった。司が今日、取った得点は一言、諦めないこと。人間は諦めれば、それ以上、先にはいかない。去年と同じ時期に、司がまさか湘南で、こういうプレーをすると想像した人はいないと思う。全てにおいて、諦めなければ成長すると彼が示したことは、浦和サポーターにとっても胸を打つシーンだったと思う。

1日の最終節は、勝ち点40で並ぶ名古屋グランパスとアウェーで直接対決する。16年は同じ最終節で対戦し、湘南は降格が決まっていた中で3-1で勝ち、93年のJリーグ開幕から参戦する“オリジナル10”の名古屋を初の降格に追い込んだ因縁がある。梅崎は「残留がかかった3チームとも今日、勝利して、なかなかないシビれる展開ですけど、勝てば残留は間違いない。敵地で絶対に勝って残留を決めたい」と誓った。【村上幸将】