元日本代表で06年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会に出場したFW巻誠一郎(38)が、現役を引退することが14日、分かった。故郷のJ2ロアッソ熊本で昨季まで5年間プレーしたが、クラブは今季からJ3に降格。関係者によると、総合的な判断から18年限りで引退することになったという。今日15日に正式発表される。市原(現J2千葉)時代から泥臭いプレーで日本を引っ張ってきた男が、ユニホームを脱ぐ。

元日本代表FW巻がユニホームを脱ぐ決断をした。関係者によると、愛着の強い故郷熊本で大きな役目を終え、現役引退を決意したという。今日15日に発表される。昨季は熊本5年目でJ2リーグ戦25試合1得点。うち先発3試合で出場機会に恵まれなかった。チームも21位で初のJ3に自動降格した。決して満足いく結果ではなかったが、常に全力で、特にゴール前の泥臭いプレーは最後までサポーターの絶大な支持を得ていた。

03年に入団した市原で才能が開花した。元ユーゴスラビア代表監督のオシム監督に素質を見いだされ、在籍7年で2桁得点が3度と活躍した。日本代表ではサプライズ選出で有名になった。06年W杯ドイツ大会のメンバー発表で、ジーコ監督が会見で選手名を発表する中、川口、中沢、中田英、中村、玉田…と22人まで予想通りの名前が続いた。だが最後に呼ばれたのは世間も驚く「マキ」。これまで地道に努力を重ねてきた男が、夢の舞台への切符をつかむドラマだった。

14年から在籍した熊本では、16年4月に最大震度7の熊本地震に遭遇した。地元の惨状に「熊本が大好きなんで、感情が抑えられません」と号泣したが、「力強く前に進まないといけない」と、震災直後から率先して支援物資を届けるなど地元を勇気づけた。

選手としても「やるからにはプロとして、1人の男としてやらなければいけない」と奮起。震災による練習不足のハンディも乗り越え、復興の象徴とも言えるひたむきな泥臭いプレーでけん引した。今後については未定だが、公私ともにがむしゃらに走り続けたプロ16年だった。