ベガルタ仙台はホームで浦和レッズと引き分け貴重な勝ち点1を積み上げた。

5-4-1を基本に形成された守備ブロックが機能し、シュート数は仙台の7本に対し浦和は6本。相手得点源のFW興梠慎三(32)をわずかシュート2本に抑え完封。これで開幕戦5年連続で勝ち点を挙げた。相次ぐ主力の流出で戦力ダウンが危ぶまれていたが、新加入のFW長沢駿(30)、MF兵藤慎剛(33)が好機能し、新生ベガルタを躍動させた。集まった1万8567人サポーターに期待を抱かせる一戦となった。

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鉄壁の守備網で、赤い悪魔を封じ込めた。FW長沢が前線からフォアチェックに入り守備のスイッチを入れると、連動するように第2陣が相手ボールホルダーにアプローチ。警戒していた相手サイドアタッカーのMF山中亮輔(25)、宇賀神友弥(30)に全く仕事をさせず、エースFW興梠への供給ラインを寸断した。ボランチに入った守備職人MF富田晋伍(32)がインターセプトで何度も攻撃の芽を摘み取り、豪華アタッカー陣に仕事をさせなかった。

完璧な守備網は、GKシュミット・ダニエル(27)が1度もシュートストップする機会がなかったほどで「集中して守れていた。最後の所でも皆が体を投げてシュートブロックに入ってくれた。相手に攻撃の形を作らせなかったし守備の部分は皆がよくやれていたと思う。(シュミット自身は)シュートストップはなかったですが、クロスボールの対応で存在感を見せられた」と手応えを口にした。

左ウイングバックに入りフル出場したMF関口訓充(33)はDF永戸勝也(24)とのワンツーで相手DFを崩しては、前線のターゲットFW長沢に何度も精度の高いクロスを供給。ボールを持つと、ゴールを予感させる動きを見せ「勝ち点3をものにできなかったのはまだまだ物足りないところ。勝也とは連係の部分で話し合い、守備の部分ではしっかり守れたと思う。コミュニュケーションを取って90分間すきを与えず戦えたことは収穫だと思います」と振り返った。

実は直前に守備網は破綻していた。順調な仕上がりを見せていたキャンプを締めくくる最後の練習試合で、J2クラブを相手にまさかの大量失点を喫し課題が噴出。開幕までに、山積した連係面のほころびを1つ1つ地道に修正して臨んだ一戦だった。5年連続開幕戦負けなしとなった渡辺晋監督(45)は「ゲームに向かうパワーだとかビッグクラブに立ち向かう反骨心だとかは今日の90分でしっかりと見せることができた。少し大味な展開が続いてしまいましたが、今シーズン戦う上で我々がチームとして獲得しなければいけなかった手堅い守備を、しっかりと表現できたと思います。しっかりチャンスも作れていたし守備の部分はちょっとした自信を持ってこれから向かっていきたい」と言葉にも自信が宿っていた。

試合後、イライラを募らせた浦和サポーター席からは猛烈なブーイングが起こった。天皇杯決勝の悔しさは、しっかりと成長につなげた。【下田雄一】