日本代表に招集された札幌FW鈴木武蔵(25)が、存在感を示すゴールを決めた。神戸に先制された2分後の前半45分、同点に追いつくヘディング弾で逆転勝利につなげた。今季9号でチーム最多得点に並び、2年連続の2ケタ得点まであと1。代表戦前最後のリーグ戦でチームに勝ち点3をもたらした。

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両チームで唯一、日本代表に選出されている鈴木が意地の1発だ。前半43分に先制を許したが、すぐに試合を振り出しに戻した。同45分だった。FWジェイのシュートがGKにはじかれると、頭で押し込んだ。2試合ぶりの今季9点目でFWアンデルソン・ロペスのチーム最多に並んだ。鈴木のゴールを皮切りにチームは2度の勝ち越しで勝利をつかんだ。「点を取って勝って代表に行きたい」と意気込んでいた理想の90分を終え「うれしいですし、言ったとおりになってよかった」と手応えを口にした。

前日30日の練習中に選手同士の接触で口内を負傷して流血するアクシデントに見舞われたが、ファイトあふれるプレーを貫いた。29日にペトロビッチ監督から個別指導を受け、この日の後半の2トップに陣形を変えた時の対策をたたき込まれていた。「うまくいった」と、成果を発揮。シーソーゲームを制した。

ジャマイカ人の父と日本人の母を持ち、スピードを生かして日本代表の攻撃をけん引する存在となる可能性を秘める。今年3月に初代表入りし、前回の6月のキリンチャレンジ杯招集時は、直前に右内転筋を痛めて辞退。「しっかりアピールしなきゃいけない身。代表定着を目指してやっていきたい」と見据えている。

今回招集されたFWは大迫、永井、鈴木の3人。大迫について「ポストプレーが上手な選手。ボールのもらい方、置き方、体の使い方を実際生で見られるので吸収したい」と、一緒に練習できる瞬間を心待ちにする。そんな尊敬の思いもあるが、サバイバルに負けるつもりもない。永井は自身に代わって招集されてゴールを決めている。「札幌でやっていることや自分の特長であるスピードやダイナミックなプレーでゴールに結びつけたい」と勢いに乗り、狙うは代表初得点だ。【保坂果那】

◆鈴木武蔵(すずき・むさし)1994年(平6)2月11日、ジャマイカ生まれ。桐生第一高を経て12年新潟入り。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)出場。18年長崎でプレーし、今季から札幌に加入した。J1通算151試合27得点。185センチ、75キロ。利き足は右。家族は妻と1男1女。特技はジャパネットたかた創業者の長崎高田明社長のモノマネ。