今季限りでアルビレックス新潟を退団するGK野沢洋輔(40)とFW矢野貴章(35)が、V・ファーレン長崎戦の後半に途中出場して、1万6814人のホームのサポーターを沸かせた。野沢は後半のロスタイムからピッチに立ち最終戦を締め、矢野は後半31分から登場し、持ち味の運動量を見せた。2-1で最終戦に勝ち、17勝11分け14敗の勝ち点62、10位で19年シーズンを終えた。

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電光時計の表示は消え、5分間のロスタイムに入った。野沢がサイドライン沿いに立つと1万6814人のホームのサポーターから大歓声が上がった。交代に気づいたGK大谷幸輝(30)がフィードの外にボールを出し、野沢をピッチに迎える。吉永一明監督(51)とハイタッチし、定位置に走った。短時間の出場にピンチの場面はない。2-1で終了を告げるホイッスルが鳴ると、小学3年の時に頭をなでてもらったというDF早川史哉(25)がまず駆け寄り抱きついた。

「夢がかなった気分。ようやく、ただいまと言えた」。この日は新潟では08年12月6日ガンバ大阪戦以来4005日ぶりのビッグスワンでのベンチ入りだった。バスケットのダンクシュートができるバネも、ボールへの反応もサビついてはいない。「やっぱり俺らしいプレーでサポーターを喜ばせたい。“ヒーロー・ノザ”でいたい」。19日に今季限りでの退団が発表された瞬間からツイッターに多くのコメントが届いた。「まだ戻ってきて」が大半。野沢も「いつか戻りたい」。

ハングリーな時代を肌で知るただ1人の選手。J1清水エスパルスから最初の新潟移籍は00年。当時は専用練習場がなく、練習場が毎日のように変わった。屋内施設のない練習場ではファンの目を避けながら屋外で着替えることもあった。新潟市陸上競技場では使用時間が過ぎると管理者に陸上スターターのピストルを鳴らされ、追い立てられた経験も「あった。あった」と笑う。そんな新潟の生き字引は1つだけ心残りがある。J1昇格を目指し今季、11年ぶりに新潟に復帰。「経験をどうチームの力にするか。J1に手が届かなかったのは僕の力不足」と悔やんでいた。【涌井幹雄】

○…吉永監督は「それぞれが、それぞれの未来に向かって何ができるかにフォーカスして臨んだ」と最終戦の意図を話した。試合後のスタジアムあいさつでは「私自身の力不足。重ねがさね、おわび申し上げます」とJ1昇格に届かなかったことに言及したが、GK野沢のロスタイム起用には胸を張った。「あの場面こそ野沢。ちゅうちょはなかった。彼のユニホーム姿を(サポーターに)見せるのが義務」と話していた。