J2アルビレックス新潟の“レジェンド”、GK野沢洋輔(40)の現役引退会見が19日、プロ選手としての原点、新潟市陸上競技場で開かれた。ファン50人を招待し同席させる異例の会見は、笑顔に包まれた。プロ生活22年でユニホームを脱ぎ、今後は新潟のフロント入り。来年1月1日付で営業部に配属され、新生活の1歩を踏み出す。

  ◇    ◇    ◇

野沢に涙は似合わない。引退会見は、ファン50人を招待するクラブ初の試み。異例ながら「らしさ」満載の会見になった。時折、笑いがわき起こる30分間だった。11月に契約満了が発表され、当初は、現役続行の道を探っていたが引退を決断。「新潟に戻る夢がかなって1年で出て行くのはさみしい」と本音を話しながらも「引退を、お祭りにできるのは、このタイミング」と引退会見をイベントに変えた。クラブのインスタグラムでは動画を生配信。正午の会見開始は仕事のあるファンの昼休みを狙った時間設定だった。

来年1月からはユニホームからスーツに着替えてフロント入りする。配属は営業部。大爆笑を誘いながら会見で明かした。「来季はアルビレックス新潟の社長に…」と言葉を区切って笑いを取り「社長と相談して営業部に入る」と続けた。コーチングスタッフの打診もあったが明るいキャラクターを生かせるのは営業トーク。会見の場で引退記念グッズの予約販売開始を告げて再び笑いを誘った。

花束贈呈にはサプライズで家族が登場。「長男(周世君=6歳)の幼稚園のクリスマス会に行くと言っていたのに」と、これ以上ない笑顔になった。会見後は招待したファンへの営業部の「名刺のお渡し会」。「新潟のサポーターは小さい子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまでいる。温かい」と新潟愛を話した野沢は決意を口にした。「選手として新潟に戻った時から、スタジアムを再び4万人にするのが夢だった。その夢を実現させるために営業として何ができるか、探っていきたい」。新しい奮闘はもうすぐ始まる。【涌井幹雄】

○…03年J1昇格当時の新潟の主将で、野沢と親交の深い山口素弘氏(50、現J1名古屋執行役員フットボール統括)は「ここまでよくやったと思います。やり切ったのでは」と労をねぎらった。引退は電話で連絡をもらったと言う。シンガポールリーグ新潟Sから復帰し、最後は新潟で終えたことも「新潟に戻りたがっていたし、希望通りになって良かったのでは」。営業部配属になる今後について「『03年のような盛り上がりをもう1度つくりたい』とよく言っていた。営業という立場でそれを実現してほしい」とエールを送った。