なでしこリーグの開幕も、新型コロナウイルスの感染拡大を受け6月までずれ込むことになった。当初3月21日に開幕するはずだったが延期となっていた。7日に日本サッカー協会が5月31日までの公式戦中止を決めたことで、最短でも開幕は6月までずれ込むことに。今季就任したINAC神戸のゲルト・エンゲルス新監督(62)は神戸・六甲アイランドで1人暮らし。自炊し、外部との接触を極力避けるなどしつつ、ステイホームを呼び掛けた。(聞き手=盧載鎭)

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-INACの現状は

エンゲルス監督(以下同監督) 4日に最後の練習をして今は休みに入った。1週間分の練習メニューを渡しているが、長期化することもあるので、またメニューを組み直さないといけないね。今週中にスタッフミーティングをして今後の方針を決める予定。

-監督自身も相当窮屈なのでは

同監督 今住んでいる六甲アイランドは人が少ないので、ジョギングとかはできている。食事も外食時にはなるべく人の少ないレストランを選ぶし、自炊もする。生まれて初めて自分でパンを焼いた。小麦粉とタマゴと水を混ぜてフライパンで焼く簡単なヤツね。ドイツ伝統のジャガイモ料理も作ったよ。パスタを作ったり、ベーコン焼いたり、楽しんでる。もう2週間以上、ビールは飲んでないよ。

-フェイスブックには、リフティングなどいろんな映像をアップしている

同監督 新型コロナウイルスの影響が拡大することは予想していた。そのため、選手が集まった時にいろんな映像を取った。うちの選手は技術が高くて、ボールの扱いがうまい。開幕が遅れてサッカーを見に来られないファンに少しでも楽しんでもらおうと思った。まだまだストックはたくさんあって、順次アップしていくよ。

-今回のコロナ禍をどうみている

同監督 うちの選手には伝えたが、今はサッカーを最優先ではないところに置いてもいい。最も大事なのは自分の人生だし、他の人の人生を邪魔しない(病気をうつさない)ことだ。うちの選手は全員プロ契約で我慢して自宅にいればいいけれど、他のチームには仕事をしながらサッカーを続ける選手もいる。(Jリーガー、プロ野球選手含め)ずっと家にいたくても、現実的にできない選手もいることを忘れてはいけない。

-母国ドイツも新型コロナ禍で苦しんでいる

同監督 実際、私が生まれ育ったデューレン市のパウル市長は幼なじみで、感染が確認された。母は9日に89歳になったが、(長女)マリコと(長男)レオがおばあちゃん家に行って祝ったものの、いつものようにケーキを囲んで誕生日パーティーはできなかった。奥さんも本来なら日本に来る予定だったが、今は来られないので、デューレンで生活している。

-監督に就任したばかりでチームをどう変える

同監督 INACはここ3年タイトルがない。2、3、4位には入っているけれど、トップの日テレと2位の差は相当開いている。まずそこを認めた上で、しっかりとした哲学とコンセプトを持って臨む必要がある。個人的にはポゼッションできるチームを目指していて、その完成度を高めれば、トップとの差は縮まってくると思っている。

-この新型コロナ禍がもたらす影響は

同監督 経済的にも社会構造にも、悪い影響が大きいのは間違いない。しかしベネチアでは水がきれいになったとかという報告もある。人間は自然の中でちっぽけな存在であることが分かる。日本だけではなく、世界全体が協力し合うことの大事さに気づくはず。人々を気遣う気持ちも、以前より強くなるだろう。目に見えない敵に、人類全員が立ち向かって、いち早く以前の生活に戻ることができれば、我々の人生はもっと豊かなものになるはずだ。