J3のYSCC横浜のFW安彦考真(42)と、17年にブラジル女子1部リーグで日本人選手初のプロ契約を結んだアバイ・キンダーマンのMF藤尾きらら(21)が3日、オンライントークショーを開催し、ブラジルでの経験などを語った。

安彦も高校3年時にブラジルへ留学し、19歳だった96年に現地のグレミオ・マリンガとプロ契約した経歴を持つ。挑戦の地としてブラジルを選んだ理由について安彦は86年から90年までブラジルでプレーしたカズこと三浦知良(53=横浜FC)の影響が大きかったと明かし「カズさんが(日本に)凱旋(がいせん)帰国した時の映像が忘れられなかった」と話した。

日本で通っていた高校は「もともとヤンキー校だった」と振り返り「自分はサッカーのおかげでなんとか生き残れていた。本当は中卒でブラジルにいこうと思っていたけど、さすがに親に怒られて止められました」。1度はかなわなかった夢だったが、友人がブラジル留学へ向かったとの話を聞くと再び意識は強まり「先を越されたと思って、親を説得しないといけないと。新聞配達をしてためたお金を差し出して、これで何とか行かせてほしいと頼みました」と懐かしそうに話した。

藤尾も高校卒業後に、なでしこリーグのクラブなどからのオファーを断り、単身ブラジルへ。まずは入団テストを受けるところから始まり、「奇跡でした」と3度目の挑戦でついにレシフェとの契約を勝ち取った。

2人は現地選手のハングリーさとサッカー観についても語った。藤尾の所属するアバイ・キンダーマンはほとんどがブラジル人選手。日々、おのおのが自分の意見をはっきりと主張しているといい「『いいプレーをしているのに、何でこの給料なんだ』とかも言ったりしている。みんな家族のために働いているので、その強さはありますね」と語った。

練習でも日本とは違う部分があるといい「体を全部使ってボールを扱う。指先から足先までフルパワーで使って、力も強いので全力でやらないと勝てない」と話した。トラップやパスなどの技術練習はほとんど行わず、味方との呼吸が合っていれば体のどこでボールを止めるのかも自由だという。「向こうの人はタイミングがずれるのを結構嫌います。このタイミング、この速さっていうのがあって、それを理解しているからこそ、技術ではなくて、味方がこう動いたら自分はこうしないといけないなど、チームのサッカーとしての練習を多くやっています」と話した。この話には安彦もうなずきながら同調した。

加えて安彦はブラジルでは練習から激しく削ることは当たり前だと話し「『どの指でシュート打ってる?』とか聞かれるんですよ。おれは親指で打ってるとか。全身をどう使うかの感覚は彼らの全てのような気がします。日本人の思うサッカーがうまいとはちょっと違う感覚なのかなと思います」と説明した。

現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でJ3はリーグ戦開幕が延期状態に。藤尾は負傷の影響もあり昨秋から一時帰国していたが、日本からの入国となるとブラジルで隔離処置などを受けといい、チームに合流できないまま待機している状態だ。藤尾は「今は1日ごとにチームにコンディションを報告して、疲労度に応じて送られてきたメニューを見て練習をやっています」と話し、一刻も早い終息を願った。

この日のトークショーはサッカーをはじめとするスポーツ人材の育成などを行うアセンダーズ株式会社が主催し、スポーツ界やトレーナー業への就職などを目指す学生や社会人など約70人が2人の話に耳を傾けていた。