鹿島の敗戦を見て、あと1歩の大切さを感じた。21日の明治安田生命J1第25節で試合前に3位だった鹿島アントラーズはアウェーのノエスタで勝ち点41で並ぶヴィッセル神戸に0-1と競り負け、5位に転落した。

試合では主導権を握る時間が長かった。だが、決定機で決めきれない。逆に、神戸は後半34分、欧州から復帰した新加入のFW武藤が左サイドを抜け出し、クロスを供給。神戸FWドウグラス、MF山口がゴール前に詰め、鹿島もGK沖、DF永戸、猛ダッシュで戻ってきたMFレオ・シルバが体を張って防ごうとしたが、あと1歩、届かずゴールを許した。

鹿島の伝統は、球際の強さと「最後はやらせない」という守備の粘り強さだ。17年だったと思う。当時、他クラブを担当していた記者は、鹿島の担当が休暇のため、代理で鹿島の練習を取材したことがあった。初めて見るアントラーズの練習風景は衝撃だった。練習にもかかわらず、ものすごい迫力で各選手がボールホルダーにプレスをかけ、ボールを奪い合っている。MFレオ・シルバ、小笠原満男氏は特に激しかった。目の前でスピード感ある“バチバチぶり”に見ていて怖くなったほどだ。と同時に「これだけ球際が激しければ、鹿島は強いはずだ」と納得したのを思い出す。

鹿島伝統の「1歩の寄せ」が、神戸戦ではわずかに及ばず決勝点を許した。相馬直樹監督は試合後、その1歩の重みを口にした。

「あと1歩で抑えられそうだったが、抑えきれなかったところでもある。選手たちにその1歩というものを、我々が取り切る部分でもそうですし、取らせない部分も、みんなで、逃げるのでなく、次は同じことにならないようにしていくことが必要。選手たちにも話しましたが、僕自身もそうですが、足りない何かを埋められるようにすることが必要になると思います」。

順位の近い相手に一瞬の隙をつかれての敗戦は、精神的なダメージも大きいだろう。だが、連戦で次節は25日に清水エスパルスと対戦する。この失点の重みを各選手が感じ「1歩の寄せ」を各選手が意識すれば、また粘り強い戦いができるはずだ。【岩田千代巳】