J2アルビレックス新潟のFW田中達也(39)が4日、今季限りでの現役引退を表明した。この日の練習後に行われた囲み取材では終始、笑顔で対応。今日5日の今季最終のFC町田ゼルビア戦にはキャプテンマークを巻き、先発出場する。勝てば5位フィニッシュが懸かるホーム戦。日本代表に、Jリーグ浦和レッズ、新潟でプレーした21年間の思いを右足に込め、現役最後のピッチに立ち、ゴール奪取で勝ち点3を取りにいく。

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ワンダーボーイがスパイクを脱ぐ。現役最後の練習となったこの日、田中は笑顔でボールを追いかけた。ピッチの近くでは家族がプレーを見守り、隣接のピッチでは新潟レディースU-18に所属する15歳の長女聖愛(せいら)が汗を流していた。練習後、チームメートに引退を伝える際には、涙で周りを見ることができなかった。その後に臨んだ囲み取材ではすっきりとした表情を見せた。「ここに集まってサッカーができなくなると思うと寂しいし、昇格できなかった悔しさが残る。ただ、やりきりました」と言った。

引退は11月上旬から考え始め、今月に入り決断した。現役続行の気持ちはあったが、悩まされ続けた左膝に限界を感じた。「100%の状態でピッチに立てないのは自分にもメンバーにも失礼」。夫人に相談し、3人の子どもたちには数日前に伝えたという。「子どもたちは現役続行を望んだが『もうできないよ』としっかり伝えた」。

プロ21年目の今季はここまで公式戦の出場はなく、日々の練習ではケガの影響で離脱を繰り返した。ただ、練習に戻れば、常に試合をイメージしてパスを呼び込み、シュートを打ち続けた。ピッチ外では「チームのためにできることはないか」と新人のDF遠藤、MF三戸、FW小見らにアドバイスを繰り返した。来季のチームには「サッカーは成熟しているので、先を見すぎずに1戦1戦しっかり戦ってほしい」とエールを送った。

今日5日の今季リーグ最終のホーム町田戦ではキャンプテンマークを巻き、スタメンでピッチに立つ。家族ぐるみで交流のある主将のDF堀米は「2日前に電話で引退を知らされた。とても悲しいが、ハットトリックを決めて、次のステージに進めるようにパスを通したい」と涙をぬぐった。

セカンドキャリアは指導者の道に進むことを考えている。だが、町田戦が終わるまでは試合に集中する。「明日(5日)の試合は一生の思い出に残ると思う。仲間、サポーターのために勝ち点3を狙う」と全力プレーを誓った。【小林忠】

◆田中達也(たなか・たつや)1982年(昭57)11月27日、山口県生まれ。東京・帝京高1年時に選手権準優勝。01年にJ1浦和入り。03年に自身J1リーグ戦初の2桁得点を記録し、ナビスコ杯(現ルヴァン杯)ではMVPとニューヒーロー賞を受賞。04年にU-23日本代表でアテネ五輪に出場。05年に日本代表デビューし、国際Aマッチ通算16試合3得点。13年に新潟に移籍。167センチ、62キロ。

▼アルベルト監督(田中の先発起用に)「新潟だけでなく、日本にとってのレジェンド。アドバイスは何もない。逆に私がほしいぐらいです。1分、1秒を満喫してほしいと伝えた」。