セレッソ大阪は9日、元日本代表MF乾貴士(34)と双方合意の下、同日付での契約解除を発表した。4月に規律違反を起こした同選手との溝は最後まで埋まらずに、5月末から途中退団で調整を進めていた。来季まで契約を残しながら、レジェンドと言われた男が、前代未聞の形でクラブを去ることになった。

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4月5日の柏戦の試合中と試合後に起こした乾による規律違反の代償は、あまりにも高かった。既に途中退団の着地は見えていたとはいえ、後味の悪さを残したことに違いはない。

今回の乾の最終処分は、計8試合(当初2試合、後に6試合)の出場停止と、約40日間に及ぶ全体練習参加禁止という、かつてない厳罰だった。

試合での途中交代に示した不満の態度だけでは、ここまでの厳罰には至らなかっただろう。やはり、交代の際にベンチで吐いたスタッフへの暴言、同じく試合後の暴言が、決定打になったとみる関係者は多い。

今回の件では、乾は自身の言動を反省し、周囲に謝罪もした。ただ、4月14日に発表された最終処分について、本人も想像以上だったのか、相当のショックを受けたと聞く。この厳罰が出た時点で、退団の可能性が生まれていた。

決して乾の規律違反を擁護するつもりはないが、1人のアスリートの心情を考えても、ましてや、18年ワールドカップ(W杯)ロシア大会で2得点したクラブのレジェンドだ。乾にもプライドはあるし、再スタートを切る環境は、もはやC大阪ではなかった。

5月中旬に森島社長との面談が実現しても、既に修復の可能性はなかった。クラブとの溝は、最後まで埋まらなかった。

乾は2011年にC大阪から欧州へ移籍し、昨年8月、相思相愛で10年ぶりの古巣復帰が決まったばかりだった。わずか10カ月もたたないうちに、両者の関係は破綻した。乾がつけていたクラブのエース背番号「8」は当面、空席になる。【横田和幸】