5連勝でJ1リーグの首位に立ったサンフレッチェ広島が、7日の天皇杯準々決勝で同6位のセレッソ大阪と戦う。

このカードは今季リーグ戦で広島がダブルを達成。前回8月27日と同様、敵地ヨドコウ桜スタジアムで中10日の三たびの対戦となる。

注目はともに広島ユース出身、広島DF荒木隼人(26)と、1学年下のC大阪FW加藤陸次樹(むつき、25)の同門対決だ。

大阪・門真市生まれの荒木と埼玉・熊谷市生まれの加藤は、中学卒業後に広島ユースに入団し、広島・安芸高田市の「三矢(みつや)寮」で、先輩・後輩として共同生活を送った。ともに高校卒業時は広島でプロ契約を結んでもらえず、荒木は関大、加藤は中大に進学した。

その4年間で実力を認められた荒木は、晴れて広島とプロ契約を結び、日本代表にもなった。加藤は大学卒業前、広島で2度目の入団テストを受けて不合格になったものの、J2ツエーゲン金沢でプロの夢をかなえた。わずか1年後の21年にC大阪へ移籍し、次期代表を目指す存在に。今季開幕前には、荒木が加藤にイタリア料理をごちそうしたほどの仲もいい。

広島が3-0で大勝した前回8月の対戦。先発した2人は、前半4分に激しく競り合い、同43分には加藤がゴール前で荒木を一瞬、置き去りにしてフリーに。ただ、左足のシュートはジャストミートしなかった。

逆に前半25分、荒木は最終ラインから前線に見事な縦パスを通し、先制点の起点になった。3連勝同士の対戦だったが、荒木が攻守に活躍した広島に軍配が上がった。

荒木は「視界から消えるのがうまく、クロスの入り方もいい」と後輩の成長を認め、加藤は「前半はチャンスもあって1点でも決めていれば、逆に3-0で勝てた試合だったかもしれない」と悔しがった。

広島では最近、荒木のように、ユースから直接プロに上がれず、大学経由で古巣に戻る“広島スタイル”が目立つ。東学大経由のMF茶島雄介(31)が14年に第1号となり、今季は流通経大からFW満田誠(23)が広島に戻り、即日本代表に選ばれている。

ユース時代から怪物レフティーと呼ばれたMF野津田岳人(28)や、前節清水エスパルス戦で約60メートルのスーパーゴールを決めたMF川村拓夢(23)のように、他クラブでの期限付き移籍を経て一人前になる下部組織出身者も多い。

C大阪で主力に定着した加藤のように、広島では契約できなかったものの、結果的に他クラブへも人材を供給している。いずれも下部組織の充実、クラブが中長期的なビジョンを持っている証明になる。

広島の足立修強化部長(50)は「荒木と加藤が対戦するのを見て、我々のアカデミー(下部組織)スタッフは、すごく勇気づけられている。こうしてJリーグに貢献できるのは、クラブとして喜ばしいこと」と話す。

広島は今季、シーズン3冠の可能性がある。森保監督時代以来7年ぶりの優勝を狙えるリーグ戦、4強に進んだルヴァン杯、前身東洋工業時代の第49回大会(69年度)以来の日本一に近づく天皇杯。大舞台での荒木と加藤の対戦は、地方クラブによる地道な強化の成功を示している。【横田和幸】