鈴鹿のFWカズ(三浦知良、55)が、JFL初挑戦のシーズンを悔しさと満足感で締めくくった。前節で今季2点目を決めたカズは、最終戦となったこの試合にキャプテンマークを巻いて2戦連続先発出場。リーグの最年長出場記録を55歳267日まで更新した試合後、1年を振り返った。

前半45分出場したが、チームは0-3の完敗。ラスト3連敗で9位に終わり「結果が出せなくて非常に悔しい」と話し、目標の「4位以内」が達成できなかったことに「プロとして責任を感じている」とした。それでも、JFL初挑戦はポジティブに捉えた。

J1から数えて4部相当のリーグを初めて経験したが「サッカーはJもJFLも同じ。レベルは違うけれど、1点や1勝の重みは変わらない」とし、「チームメートと知り合えたし、力を合わせてやってこれたことには満足している」。そして「この1年間経験してきたことは、これからのサッカー人生のために必ず役に立つ」と言い切った。

圧倒的な存在感だった。この日の観客数は3644人。もちろん、クラブ史上最多だった。鈴鹿が絡む試合は各クラブで観客動員記録を更新。国立での新宿戦は1万6218人でJFL最多記録を更新、奈良では歴代2位の1万4202人を集めた。鈴鹿以外のJFL15クラブ中、12クラブが鈴鹿戦で観客数の記録を更新。奈良クラブとFC大阪のJ3昇格は、条件となる観客数でカズが「アシスト」したともいえる。

観客動員以外でも「カズ効果」は大きかった。Jリーグに比べて注目度が低いJFLにスポットライトを当て、認知度を高めた。各クラブは鈴鹿戦に合わせてイベントを企画、多くの報道陣に対応するなどJFLレベルを超えた運営で知見を得た。

もちろん、JFLもその功績を高く評価。何らかの形で表彰することも決めている。賞の名称などは未定だが、カズへの感謝を形として残すことになる。

カズはまた、初めて監督と選手という立場でともに戦った兄の三浦泰年監督にも感謝。「ヤスさんには助けられた。一緒にできてよかった」と話した。

三浦監督もまた、カズに感謝し「55歳でここまで過酷に準備をする姿は私も、未来ある選手も見てきた。それが、素晴らしい宝になる」と話し「Jリーグで悔しい思いをし、苦労してきたカズが、ここで自信を取り戻してくれたら。カズの未来に向けて、いいシーズンになってくれたらうれしい」と振り返った。

試合後、カズはバスで鈴鹿に帰るチームと離れ、1人空路で帰京。21日にはW杯公式スポンサー「ハイセンス」のアンバサダーとしてカタールに飛び立つ。白紙の来季については、W杯から帰国後に考えることになる。「ありがとうございました」。カズはそう言いながら報道陣やファンに何度も手を振り、来季プロ38年目のシーズンに向かう。【荻島弘一】