創設2年目の社会人クラブBTOP(ビートップ)北海道が1-0で十勝スカイアースを下し、天皇杯初出場を決めた。終始主導権を握られながらも、後半38分にMF沢田航汰(22)が決めたPKの1点を死守。2月に就任した磯部和彦新監督(28)率いるチームは21日、札幌・厚別公園競技場で行われる1回戦で山形大医学部(山形代表)と対戦する。

試合終了のホイッスルと同時に、ピッチに崩れ落ちる選手もいた。チームメートと笑顔で抱き合い、体を支え合う選手もいた。スタメンも途中交代の選手も、精根尽き果てるまで走り、後半38分に手に入れた虎の子の1点を守り切った。「何一つ文句も言わず、ひた向きに走る選手たちの姿を僕は誇りに思います」。磯部新監督が目を細めた。

ピッチに雪の残る3月上旬。作新学院大から加入したMF沢田が屋内練習場のドアを開けると、そこにいたのは7人。その日、沢田の後に、その場を訪れる選手はいなかった。面談で指揮官に誘われて入団したが「『大丈夫かなこのチーム』と思った」と、沢田は心境を振り返る。

道リーグ1部の社会人チーム「サンクくりやま」を吸収する形で「BTOPサンクくりやま」としてスタートしたのが昨春だった。目標は1年でJFL、4年でJ1へ最短昇格。道リーグ1部で優勝し、全国地域チャンピオンズリーグにも出場したが、JFL昇格は逃した。チームに残った選手は6人だった。

「選手としても、指導者としても、さすがに6人しかいないチームを見たことはなかった」と指揮官。大卒4人、高卒1人、Jリーグ、JFL、地域リーグなどで経験のある選手11人に声をかけ「BTOP北海道」とチーム名も変え、総勢22人の選手で新たなスタートを切り、まずは天皇杯切符をつかんだ。

元コンサドーレ札幌のDF浜大耀(24)は、コンサドーレのサッカースクールで指導しながら選手を続行する。沢田は現在、学生時代にアルバイトでためた貯金を切り崩しながら生活。ハローワークに通いながら、トレーニングにも公式戦にも参加する。「4年でJ1」を、「情熱のフットボール」にスローガンに変えたチームが、2年目で新たなステージに挑戦する。【中島洋尚】