サンフレッチェ広島が、セレッソ大阪のエースFW加藤陸次樹(むつき、25)を電撃獲得した。21日、両クラブが完全移籍を発表した。同選手はC大阪との契約を1年半残すため、広島が移籍金を支払う形で決着。広島と複数年契約を結んだ加藤は、週明けの練習から合流する。

Jリーグを代表する究極の育成クラブ広島が、広島ユースで育った加藤とはいえ、同じJ1の中規模経営で、同じ上位を争うライバルの主力を、シーズン中に移籍金を支払ってまで獲得するのは異例中の異例。

広島は昨季、ルヴァン杯で初優勝し、リーグ戦では3位に躍進したものの、今季はルヴァン杯、天皇杯ともに敗退し、リーグ戦も現在5戦未勝利の8位と正念場を迎えている。

日本代表にも選ばれたFW満田誠が5月から、右膝の大けがで長期離脱中。FWドウグラス・ヴィエイラら外国籍選手のコンディションにも不安があり、前線の駒不足は顕著だった。

さらに来年2月には、広島市に新本拠地エディオンピースウイング広島が誕生する。新たな歴史の第1歩に、新たなスター候補も必要だった。

そこで広島ユースで育ち、昨年のルヴァン杯決勝でも広島から先制点を奪うなど、C大阪で成長した加藤をリストアップ。攻守に強度の高いプレーができ、強烈なシュートによる得点力だけでなく、小技でアシストもできる。スキッベ監督の評価も高く、今年7月に入って、C大阪に正式オファーを出した。クラブ間交渉を経て、17日に広島と加藤が直接交渉し、移籍への結論が出た。

8月で26歳を迎える加藤は広島ユース、中大、J2ツエーゲン金沢を経て、21年に個人昇格の形でC大阪へ移籍。この2年半で、J1通算78試合16得点をマークし、今季ここまで17試合3得点3アシストと得点に絡み、C大阪では実力と人気でクラブの看板選手になっていた。

広島では下部組織出身のGK大迫敬介、DF荒木隼人、MF川村拓夢、満田らが日本代表を経験し、チームの中心選手に定着。加藤は広島ユース時代、荒木の1学年下で、満田、川村の2学年上にあたる。加藤の加入で、改めて広島のクラブカラーを打ち出せる。

究極の育成クラブを自任する広島は、ユースから直接トップチームに昇格するか、ユースから大学やJ2クラブなどを経由で広島に戻るのが主流だった。今回の加藤はユース、大学、J2経由は同じだが、他のJ1クラブで主力に成長してから広島に戻るという、新たな補強例を示した。

広島のクラブ関係者は「新たなモデルとして、こういう成功の方法があるんだと、アカデミー(下部組織)の選手には伝えていきたい」と話している。

◆加藤陸次樹(かとう・むつき)1997年(平9)8月6日、埼玉・熊谷市生まれ。クマガヤSCから広島ユース、中大、J2金沢を経て21年C大阪へ。J1通算78試合16得点、J2通算42試合13得点、ルヴァン杯通算22試合7得点。双子の兄威吹樹(いぶき)は現関東1部南葛SC所属のDF。178センチ、69キロ。

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