歴史的なシーズンが幕を開ける。春秋制から秋春制へと移行するJリーグの野々村芳和チェアマン(54)がこのほど、取材に応じ、その意義と今後の展望を語った。リーグが世界的な競争力をつけるため、そして日本サッカーをさらに前進させるため、夏真っ盛りの8月7日に新シーズンが開幕する。【取材・構成=佐藤成】
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W杯北中米大会の熱気が冷めやらぬ8月からJリーグが始まる。欧州トップリーグと足並みをそろえ、世界に並び、追い越すための取り組み。「Jリーグ第2の誕生」ともいえる大改革を前に、野々村チェアマンは自然体で構えている。
「本当に普段となんら変わらないかな。世界の人からどう見られるかも含めて、自然に成長していく。今まで通り選手たちは頑張ってくれるだろうし、サポーターもファンも今まで通り楽しんでもらえればよくて、という心境です」
2月開幕だった昨季までとは大きく異なる。8月7日に開始し、来年6月6日に閉幕。長く議論を重ね、課題や不安要素をつぶし、サッカー界の総意としてたどり着いた1つの結論だ。
最も重要なのはパフォーマンスの波を世界とそろえること。これまでは、開幕時を0%とすると、8月に走行距離や高強度走行距離がマイナス19・1%まで落ちて、シーズン終盤にマイナス5・1%となる「谷型」だった。一方で欧州5大リーグは夏場に始まって徐々に上がり、5カ月後にプラス9・8%まで上昇。閉幕時はプラス1%と一度もマイナスがない「山型」を描く。
選手経験のある野々村チェアマン自身もデータをみて「あり得ないと思った」と振り返る。自身の現役時代のように国内での競争ならばそれで良かった。世界と競争する観点では『山型』にすることが大切になると考える。「日本の中に世界の水準をどう作っていくかが大事」と説く。
他にもシーズン移行のメリットはある。時間軸が欧州と同じになることで移籍金の収益も変わる可能性が高まる。今まではシーズン中だった夏場の引き抜きが、オフになることで編成上のダメージも減る。
「日本も最終的にはイングランドみたいに買う側まで行きたい。でもまずはティア2レベルに。例えばポルトガルとかベルギーとかは、日本から1億円で買って翌年に20億円とかで売っている。するとリーグの移籍金収支がプラス100億円とかになる。日本は適正価格で売れるようになることを目指しています」
今夏には5クラブが欧州で合宿を張った。7月にはJリーグとしてフォーラムを開催。欧州クラブ関係者が60人近く集結しJクラブ強化担当者との接点を作った。「毎年開催してほしい」と要望を受けたという。
「向こうのスタンダードを聞けるのは勉強になる。チームを作るとか、選手を育ててどうやって次のステップに移していくとか、どういう選手を獲得していくとかビジネスの部分も含めてね」
アジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)制覇にも近づくと見ている。日本勢は直近3大会連続で圧倒的な資金力を誇る中東勢に敗れて準優勝。これまでは8月開幕のアジアの戦いに、前年12月に閉幕するJリーグで上位に食い込んだチームがシーズンをまたいで挑んでいた。今後は6月閉幕時に出場権を獲得したチームが2カ月後に出るためギャップが少なくなる。
「6月の時点でベストな5チームが8月からゲームをできるのはメリット。あとは最後はその国のリーグの実力なんじゃないかと思っている。日常のお客さんの数とか熱量、育成とかJリーグの方が可能性がある。絶対に勝てる」
93年5月15日のJリーグ開幕時は慶大3年だった。熱気を感じ「就活これだな」とプロになる決意を固めた。約30年が経ち、その進化は著しい。クラブ数は10から60に増加。年間入場者数は約1300万人。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の約1600万人に肉薄するなど、一大娯楽になった。
今年の開幕は93年以来の画期的な出来事になる可能性がある。
「振り返ってみたら、『あの時!』となるんじゃないかなと思う。世界のサッカーマーケットの中で自分たちは仕事してるんだっていう感覚を持てれば持てるほど、アンテナも張れる。みんながいろんな発想でいろんなチャレンジをするっていうことが必要」
まさに新開幕。ここからJリーグが世界から選ばれる場所になる。
◆野々村芳和(ののむら・よしかづ)1972年(昭47)5月8日、静岡県生まれ。清水東高、慶大を経て95年市原(現千葉)入り。00年札幌に移籍し、01年は主将としてJ1残留に導く。同年終了後に現役引退。06年から札幌アドバイザー。13年1月に北海道フットボールクラブ(現株式会社コンサドーレ)顧問に就任し、社長、会長を歴任。22年3月から現職。現役時代はJ1通算118試合6得点、J2通算36試合2得点。血液型A。



