<全日本女子サッカー選手権:常盤木学園0(5PK4)0日テレ・ベレーザ>◇3回戦◇19日◇宮城スタジアム

 高校生が、なでしこに勝った!

 常盤木学園(宮城)が、なでしこリーグ王者の日テレ・ベレーザを0-0で迎えたPK戦で下し、初の8強入りを決めた。鉄壁の守備で最後までゴールラインを割らせなかった。阿部由晴監督(48)の横で戦況を見つめた高須真央マネジャー(3年)の的確な指示も光り、大金星を挙げた。東京電力マリーゼ(福島)は日体大を圧倒し、準々決勝に駒を進めた。

 日が暮れたピッチ上で、カクテル光線を浴びた常盤木学園の選手が次々と重なっていく。王者に勝った。涙を流す者もいた。礼を終えると、阿部監督の元に駆け寄り、力いっぱい抱き合って喜んだ。U-17(17歳以下)女子日本代表FW京川舞(3年)は「とにかく素直にうれしい」と声を弾ませた。

 耐え抜いてつかんだ勝利だった。試合開始直後から、日テレ・ベレーザにボールを支配され続けた。カウンターで好機を見いだしたが、すぐにボールを奪い返されてしまう。それでもゴールラインだけは割らせない。京川を1トップで前線に残し、残りの10人はブロックを作って守備に徹した。日本代表MF沢穂希ら日本代表勢に、必死で体を当ててボールを奪いにいった。シュート数は相手の14本に対し6本。でも、勝った。

 大金星には、陰の立役者の存在があった。マネジャーの高須真央(3年)。今大会前からマネジャーに専念し、阿部監督の横で戦況を見つめた。ハーフタイムには「DFはゾーンで守れているけど、ドリブルで来られると崩されている」と選手にアドバイスを送った。DF小野田莉子主将(3年)が「冷静だし、指示も的確」と全幅の信頼を寄せている。

 高須自身、プレーへの未練もある。「練習を見ているとボールを蹴りたくなることもある」。その気持ちを抑えて、サポートに徹する。コーチングの本を読み、過去の試合映像を見て勉強した。将来の夢はトレーナーになること。「今は『ありがとう』の一言がうれしいんです」。

 試合後には、校内の合唱コンクールの公募で高須が作詞した「言葉」を全員で歌った。まさに、チーム一丸となってつかんだ勝利だった。「PK勝ちでも、歴史をひっくり返せたと言えると思う」(京川)。緑のユニホームを着た高校生は、確かにその名を歴史に刻んだ。【今井恵太】