【ドーハ(カタール)12日=岡崎悠利】サッカー日本代表の森保一監督(54)が、「サムライブルーノート」を携えて直前合宿に臨んでいる。これまでの国際試合で小さなノートにメモをとる姿がたびたび話題になった。一体、どんなことをメモしているのだろうか? 大会への事前取材でメモについて明かしてくれた。カタールには代表カラーの真っ青な1冊を持参。そこには国を代表する気持ちが込められている。

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ドーハでの本格練習初日。指揮官の右手に真っ青なノートが握られていた。愛用するコクヨ社のキャンパスノート。これまで水色のものを使用していたが、今回はサムライブルーをほうふつする鮮やかな青だ。「手に入れたので持っていきます」との宣言通り。長友が黄金ヘア、谷口がバットマン姿で話題をさらう中、ひっそりと披露した。

メモを取る姿がたびたび映される。事前取材の際、「他の監督さんも、結構書かれていますよね。僕は取り上げるところがないから…」と苦笑いを浮かべつつ、撮影しない条件で一部を公開した。試合時はスタメンとベンチの選手を本名でなく愛称で記入。試合前に話すこともまとめておく。

複数色のボールペンを使い、試合中はポジティブ要素を青、課題などは赤で書き残す。「前半の入りがどうだった、プレスがダメだったとか。あとは攻撃と守備で、何分になにがあったか(プレーを)◯と×で書いて。誰のこれがよかったとか」。コーチとも共有し、必要だと判断すればハーフタイムに選手に伝える。

もともとはリングで束ねられたノートを使用していた。ただ「破れたり、重ねるときに置きづらくて」とキャンパスノートに変更。ポケットからもサッと取り出せる。試合ではスーツの内ポケットの左側にペン、右やズボンにノート。これが森保スタイルだ。

実は2種類のノートを使い分けている。普段は6ミリ×21行。試合時は26行と大きめだ。走り書きになることもあるためスペースに余裕を持って。ページを2つに折り、チームごとに起きたことを分けて記入。食事会場などにも持っていく小さめノートと合わせれば、ピッチ内外で、当時のチームの記憶がよみがえる。

メモは広島時代からの習慣だ。数え切れないほどのノートが自宅の部屋に積み上げられ、妻に「このスペースどうするの」と言われ、データ化した上で捨てた。

もっとも「実際は、メモしちゃいけないとも思っている」と言う。広島時代に影響を受けたペトロビッチ監督(現札幌)は書かなかった。「頭の中の映像を文字化して話す。同じようにできなければいけないなと思うけど、人それぞれ能力は違うので…」。再び苦笑いしたが、このスタイルで広島を3度のJ1リーグ優勝に導き、東京五輪で4位、W杯出場も決めた。

日頃から大事にしている収穫と課題。2つが詰まったノートは、代表監督に就任してから5冊ほどたまった。カタールに持ち込んだ「サムライブルーノート」が、W杯での森保ジャパンの軌跡となる。選手が輝き、ポジティブな「青」の書き記しで埋め尽くされるはずだ。