フランスが、決勝トーナメント進出を一番乗りで決めた。エースFWキリアン・エムバペ(23)が、デンマークを相手に決勝点を含む2発。2連勝の勝ち点6で2位以上が確定した。

前回王者は過去3大会連続で1次リーグ敗退という“ジンクス”を振り払い、史上3チーム目の大会連覇に向けて第1関門を突破した。エムバペ(23)は、W杯通算7得点目とし、フランス歴代単独2位に浮上した。

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エムバペが、難敵を打ち砕いた。0-0の後半16分、快足を飛ばしてゴール前に迫った。DFのT・エルナンデスのパスを、右足で合わせて先制点を奪取。同点に追いつかれた同41分にはFWグリーズマンの右クロスを右太ももで押し込んだ。ファンをあおるように両手を広げて雄たけび。今季ネーションズリーグで2戦2敗だったデンマークに競り勝った。一番乗りでの1次リーグ突破に導いた。

デシャン監督は「何度も言ってきたが、彼は並外れた選手だ。ピッチでは蒸気機関車のように走り、観衆を盛り上げている」と賛辞を惜しまなかった。

前回王者は勝てない-。過去3大会は、前回優勝国のイタリア、スペイン、ドイツが1次リーグ敗退。さらにチームは、FWベンゼマやDFのL・エルナンデスが負傷で離脱するなどケガ人が続出。しかし、王者は下を向かない。明るくトレーニングに励み、夕食後にはトランプやUNOで親睦を深めた。ジンクスや非常事態を振り払うだけの余裕があった。指揮官は「気にしたこともなかった」とジンクスを一蹴した。主将のGKロリスは「先を見すぎるとつまずく」と冷静に話したが、3大会連続の連勝スタート。4年前の決勝トーナメント1回戦から続く連勝は、W杯歴代3位タイの6に伸びた。

エムバペは、破格の存在感で、連覇を狙うチームを引っ張る。デンマーク戦も両チーム最速となる時速35・2キロのスピードで敵陣を切り崩し2戦連発、今大会3点目。これで、W杯での通算得点を7に伸ばした。名手アンリを抜き、フランス歴代単独2位に浮上。さらに代表通算ゴールも31得点とし、ジダンに並んで歴代7位タイに入った。23歳のストライカーの伝説は、まだ始まったばかりだ。

◆前回王者敗退のジンクス 10年の南アフリカ大会から3大会連続で、前回覇者が1次リーグ敗退となっていた。06年優勝のイタリアは、10年の南アフリカ大会で1敗2分で敗退。10年覇者のスペインは、14年のブラジル大会初戦でオランダに1-5で大敗し、第2戦でも敗戦。2試合で敗退が決まった。14年王者のドイツは、18年ロシア大会で1勝2敗で敗退した。