【ドーハ(カタール)28日】メンタルモンスターの真骨頂を見せる時だ! 日本代表DF長友佑都(36=東京)がコスタリカ戦の敗戦から一夜明け、練習で汗を流した。ショックは大きいが、ここまで3度、W杯の大舞台を経験する男の目は、スペイン戦の勝利に向いている。自他共に認める超ポジティブマンは、自力突破には勝利必須の状況すら、好都合と受け止める。国際Aマッチ140試合、W杯に日本代表最多13試合出場のベテランが、チームを再び上昇気流に乗せる。

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コスタリカに負けても、へこたれてなんかいなかった。日本の元気印・長友は、スペイン-ドイツ戦もチェックした上で「日本が勝利するイメージがはっきり見えている」と言い切った。強がりではない。本気。「スペインは非常に完成度が高い。ただ、すきはある」。具体的な対策は「情報戦なので」とけむに巻いたが、はっきりと自信を示した。

コスタリカ戦で引き分けていれば、スペイン戦は引き分けで1次リーグ突破だった。それでも「引き分けでもいいのかと、ぼやっとしている方が戦い方は難しくて。勝たないといけない状況の方が、はっきりしていてやりやすい。かなりプラスに捉えている」と、メンタルモンスターぶりは変わらない。

W杯には「第2戦の壁」がある。他組も、27日までに2試合を終えた4組中、連勝したのは前回王者フランスのみ。長友は10年南アフリカ大会から4大会目になるが今大会も含めて、2戦目は2分け2敗で勝利はしていない。南アでは第2戦に負けた後、DF中沢佑二ら年長組に「全然問題ない」と声をかけられたことに救われ、続くデンマークに勝って決勝トーナメントに進出した。「それをする立場になった」今大会。成功体験があるからこそ、動じない。

メンタルモンスターを支える“超ポジティブ思考”は、セリエAの強豪インテル時代に培われた。薫陶を受けたのは同僚で主将だった元アルゼンチン代表DFサネッティ。「ユウト、ここだぞ。頭の中をポジティブで埋め尽くせ」。リードを許した後半ロスタイムにも言われ続けた言葉が、心と体に染みついている。

スペイン戦を「生きるか死ぬかの戦い」と言った表情には、たぎる思いがあふれる。「逆に強豪の方が力を発揮できる。全く負ける気はしないし、自分のマッチアップの相手は全て勝つだけ」。金髪にし、赤髪にし、ドイツに勝った際は「ブラボー!」を連呼。誰よりも大舞台を知る男が、チームをふたたび歴史的勝利へ押し上げる。【岡崎悠利】

◆サネッティって? ハビエル・サネッティ。元アルゼンチン代表で国際Aマッチ143試合出場は同国最多。「キャプテンの中のキャプテン」と愛称がつくほどのリーダーシップを誇った。95年から14年までインテルでプレー。05-06年シーズンから09-10年までのリーグ5連覇を含む公式戦615試合出場というクラブのレジェンド。11年に長友がセリエA初ゴールを決めた際には2人で「お辞儀パフォーマンス」を披露し、その後の慣例になった。現在はインテルの副会長を務める。