【ドーハ(カタール)2日】MF堂安律(24=フライブルク)が、またも日本を救った。1点を追う後半から途中出場したスペイン戦は、登場3分で強烈な同点ゴールを記録。

MF田中碧の決勝点を含めて全2得点に絡んだ。登場4分で同点ゴールを挙げたドイツ戦に続き、W杯優勝国に対し、悪魔の左足がさく裂。背番号8が日本のワンダーボーイになった。

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「あそこは俺のコース」という堂安のツボが、後半3分にやってきた。鎌田、三笘、前田、伊東が前線でスペインにプレスをかけ、最後は堂安へ。

「なんで、あんなフリーになったのか、分からないぐらい。あそこでフリーにさせると、堂安律は危ないんで。決めました」

得意のペナルティーエリア右角沿いを中央に向かって数歩、ボールを運んで左足を振り抜く。守護神シモンの手をはじき、強烈な同点ゴールが決まった。

「相手が後半、ふわっと入ってきた雰囲気があった。チャンスだと思った」

1点を追う後半開始から投入され、わずか3分で会場の空気を一変させた。ドイツ戦も後半26分に途中出場し、4分後に同じ“悪魔の左足”で同点弾。この日は田中の勝ち越し点も、堂安のパスが呼び込んだ。

1大会2得点は日本では稲本潤一、本田圭佑、乾貴士に続く4人目。4ゴールの通算最多得点記録を持つ本田に、わずか1大会で並ぶ可能性さえある。

W杯切符が懸かった3月のアジア最終予選。突然代表から外れた堂安は、ツイッターに「逆境大好き人間頑張りまーす。あ、けがしてません」と投稿した。

日本が本大会出場を決めた敵地オーストラリア戦は、休養地ドバイの砂浜で生の映像を見ていた。

「(落選は)時間がたって考えると、ありがたくて。頭をリセットできた」

当時は森保監督との不仲説も一部で流れた。J3長野で活躍した兄憂さん(26)は「弟はやんちゃですけど、そんな、あほなことはしない」と否定。実際、ぶれない指揮官を尊敬していた。だからこの日、日の丸の旗をまとい、森保監督と抱き合う姿があった。

「ドイツ戦で得点したけど、ただの偶然だろと言う人もいて、うるせえなと。これで1戦目が奇跡じゃなく、必然で勝ったとみなさんに思ってもらえる。ただ、本当にまだ歴史を塗り替えたわけじゃない」

ドイツに続き、昨夏の東京五輪で敗れたスペインを沈めた。この2戦で日本が奪った4得点のうち、2得点の堂安は3点に絡む。初先発のコスタリカ戦が消化不良に終わり、再び逆境での強さを発揮。「W杯優勝」を掲げるワンダーボーイが、次は日本悲願の8強進出を目指す。【横田和幸】

◆堂安律(どうあん・りつ)1998年(平10)6月16日、兵庫・尼崎市生まれ。G大阪下部組織で育ち、プロ2年目の17年7月にフローニンゲン移籍。PSV、ビーレフェルト、PSV、22年7月にフライブルクへ。左利きの攻撃的MFで、21年東京五輪は6試合1得点。W杯は初代表で国際Aマッチ通算32試合5得点。172センチ、70キロ。