レジェンドにささぐか、レジェンドに並ぶか-。36年ぶりの優勝を目指すアルゼンチンと、史上3カ国目の連覇を狙うフランスによるFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会決勝が18日午後6時(日本時間19日午前0時)に行われる。「神の子」ディエゴ・マラドーナ氏が一昨年、60歳で亡くなってから初のW杯。アルゼンチンのエース、FWリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)は優勝をささげることができるか。フランスの怪物、FWキリアン・エムバペ(23=パリ・サンジェルマン)は、王様ペレが成し遂げた10代で初出場から連覇の偉業なるか。

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優勝の瞬間を見てほしかった人はもういない。それでも、空の上まで歓喜の声は届くはずだ。20年に60歳でこの世を去ったマラドーナ氏へ、メッシが優勝トロフィーを高々と掲げる。

W杯優勝を果たすなど輝かしい功績を残したマラドーナ氏。メッシは「神の子」と比較され、批判されてきた過去もある。5度目の挑戦となった今大会は「毎試合最高の状態で臨むことができて、気分がいいよ」と絶好調。準決勝でアルゼンチン歴代単独1位となるW杯通算11得点を記録。決勝のピッチにたてば、史上最多26試合出場も達成する。「最後のW杯」で頂点に立てば、マラドーナ氏に並び、超えることができるかもしれない。

前日会見に出席したフランスの主将GKロリスは、アルゼンチンについて語るため、2人の名前を出した。「彼らは故ディエゴ・マラドーナのような世界クラスの選手を輩出し、今はリオネル・メッシがいる。素晴らしい試合を楽しみにしています」。ライバルからもレジェンドと同じほどの、尊敬のまなざしを受けている。

毎大会のようにスタンドから声援を送っていたマラドーナ氏へ。少し遅くなった優勝の報告を届ける。

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前日会見に出席したフランスのデシャン監督は、23歳の逸材の心を推し量るように言った。「エムバペには心の平安と静けさが必要。彼は自分のパフォーマンスに集中したいと思っている。今はその心の平穏を乱したくない」。エムバペは決勝トーナメント1回戦で得点ランクトップの5点目を挙げてから、ここ2戦ゴールがない。たまりにたまったエネルギーを爆発させる時が来た。

エムバペに見えているのは王様の記録。W杯初出場から連覇となれば、ペレ氏に並ぶ快挙となる。2人は19年に行われたイベントで対面したことがある。その際にペレ氏は「私も(キャリアで)1025ゴールを決めているから、彼にも1000ゴールは可能だ」と太鼓判。王様から直接、才能を認められている。

前回ロシア大会の決勝で、19歳のエムバペはチームの4点目をマーク。10代の選手が決勝で得点を決めたのは、当時17歳のペレ氏以来、60年ぶりの快挙だった。今大会を通じて「目標は優勝だけ」と全集中してきたエムバペ。60年前、ブラジルが連覇を果たした時に、中心にいたのはペレ氏だった。フランスの怪物が王様に続く時が来た。【磯綾乃】