アルゼンチンFWリオネル・メッシ(35)が2得点し、5度目の挑戦で悲願の世界一を手にした。

連覇を狙ったフランスをPK戦で下し、「神の子」ディエゴ・マラドーナを擁した1986年以来9大会ぶり3度目の世界一。唯一手にしていなかったタイトルをメッシがつかみ、ついに神になった。南米勢としては02年のブラジル以来5大会ぶりとなった。前回優勝のフランスは、イタリア(1934、38年)とブラジル(58、62年)に続く史上3チーム目の2連覇を逃した。決勝でハットトリックを達成したキリアン・エムバペ(23)が8ゴールで得点王を獲得した。

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36年ぶりの優勝を狙うアルゼンチンは4-3-3の布陣。GKはE・マルティネス(アストン・ビラ)、DFは左からタリアフィコ(リヨン)オタメンディ(ベンフィカ)ロメロ(トットナム)モリナ(アトレチコ・マドリード)、中盤の3枚はフェルナンデス(ベンフィカ)マカリテル(ブライトン)デパウル(Aマドリード)。3トップは左からディマリア(ユベントス)アルバレス(マンチェスター・シティー)メッシ(パリ・サンジェルマン)が先発に名前を連ねた。

2大会連続3度目の優勝を目指すフランスは4-3-2-1布陣。GKロリス(トットナム)DFは左からT・エルナンデス(ACミラン)ウパメカノ(Bミュンヘン)バラン(マンチェスターU)クンデ(バルセロナ)。中盤はボランチにチュアメニ(Rマドリード)、左にラビオ(ユベントス)、右にグリーズマン(Aマドリード)。左ウイングにエムバペ(パリ・サンジェルマン)、右ウイングにデンベレ(バルセロナ)、1トップにジルー(ACミラン)。

今大会の得点王を争うメッシとエムバペ。同じパリ・サンジェルマンのチームメートによる「10番」対決は、まずメッシがゴールを奪った。前半21分に左サイドからディマリアがドリブルで仕掛け、これをデンベレがエリア内で後方から倒した。この絶好機にメッシがPKをゴール右へ冷静に決め、同23分にアルゼンチンが先制した。メッシは今大会6点目で、5得点で並んでいたフランスのFWエムバペをリードした。

アルゼンチンの勢いは止まらない。相手のパスカットから中盤でメッシが右サイドのアルバレスにはたく。右サイドのアルバレスが縦に抜け出しマカリテルにパス。マカリテルがペナルティーエリア手前からファーサイドにラストパス。ディマリアが冷静に流し込み2点目を奪った。メッシは追加点の場面でも起点となった。

劣勢のフランスのデシャン監督は早くも動いた。前半41分、ジルーとデンベレを下げ、チュラム(ボルシアMG)とコロムアニ(Eフランクフルト)を投入。だが前半はまったく攻め手がなく、シュートはゼロ。アルゼンチンが2点リードで折り返した。

後半もアルゼンチンは激しい守備でエムバペをマークし、流れを渡さない。ボールを奪えば切れ味鋭いカウンターを発揮。後半15分には左サイドのディマリアの仕掛けから中央へパスを通し、最後はメッシがシュートを狙った。この大一番で、経験豊富な34歳ディマリアと35歳メッシのベテランコンビがドリブルを武器に躍動。南米の巧者ぶりを見せつけた。

フランスは後半27分に司令塔のグリーズマンを下げるなど、さまざまな選手交代の手を打ったが、リズムをつかめないまま時間だけ過ぎていった。

そんな中、フランスは後半34分、コロムアニが倒されてPKを得る。このチャンスにエムバペが力強くゴール左へ蹴り込み、1点を返した。再びメッシに並ぶ今大会6点目。この1点で息を吹き返した。

さらに1分後の後半36分、敵陣中央のラビオが左サイドのエムバペに浮き球のパス。エムバペは頭で落とし、チュラムとのワンツーから抜け出し、エリア左から右足で鮮やかなボレーシュート。これがネットに突き刺さり同点2-2の同点とした。エムバペはわずか2分間でメッシを逆転する今大会7点目。単独トップに立った。

終盤はフランスが攻勢に出るもアルゼンチンも激しい守りでゴールを割らせない。メッシも強烈なミドルシュートで応戦した。8分のアディショナルタイムを終えて、試合は延長戦に突入した。

延長前半、終了間際にアルゼンチンはメッシのパスから絶好機を迎えるが、フランスは体を張った守りで得点を許さない。続けざまにLa・マルティネスのシュートもわずかにゴールを外れた。

そして延長後半3分、メッシが「神」となった。La・マルティネスのシュートをフランスGKロリスがはじき、そのこぼれ球を右足でシュート。相手選手がクリアするも、ゴールラインを割っていた。今大会7点目。再びエムバペに並び、得点ランクトップに立った。

勝負は決まったかと思われたが、同12分にフランスが追いつく。エムバペのシュートを相手がハンド。このPKをエムバペが決めてハットトリック達成。今大会8得点でまた得点ランクの首位に立った。

延長後半も両チーム果敢に攻撃に出たが、ともに死力を尽くして戦う。死闘は両者譲らず、PK戦に突入した。

PK戦はフランスの先蹴り。1人目でエムバペが成功。アルゼンチンも1人目でメッシが冷静に左へ転がして成功。エース対決はどこまでも互角だった。

そしてフランス2人目のコマンをアルゼンチンのE・マルティネスがセーブ。フランスは3人目のチュアメニも外した。アルゼンチンは4人目のモンティエルが決め、キッカー全員が成功させた。大声援の中、笑顔のメッシに対し、アルゼンチンの選手たちは感涙に浸った。14年ブラジル大会決勝でドイツに敗れるなど、メッシにとってW杯は唯一手にしていなかったタイトル。「最後のW杯」と位置付けた大会で、正真正銘のサッカー史上最高の選手となった。

また、アルゼンチンは今大会初戦でサウジアラビアに1-2と逆転負けしたが、そこから立て直した。22回目の大会で、黒星スタートからの優勝は10年南アフリカ大会のスペイン以来2例目となった。

中東初開催で11月20日から29日間、32チームが熱戦を繰り広げたサッカーの祭典は閉幕した。次回の26年大会は、出場枠が48チームに拡大されて米国、カナダ、メキシコで共催される。

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