フランス対ウルグアイは、前半のセットプレーの攻防が明暗を分けた。

 フランスは前半44分にFKで先制した。FWグリーズマンがキックモーションに入ったところ、いったんストップ。ウルグアイのDFラインが後方へ少し下がったところ、ゴール前へ正確なボールを送った。そこへ遅れて走り込んだDFバランが相手選手の前に入って頭で合わせ、ゴールが生まれた。

 このプレーの前にもフランスは同じようなFKがあった。グリーズマンがタイミングをずらして蹴ったが、この時は味方選手とうまく合わなかった。ただ、この1本が次への捨て石となった。得点となったFKの場面、再び相手選手が下がることを狙ってボールを入れている。そこへうまく味方選手が入った。素晴らしい連係だったし、よくスカウティングし練習していたからこそのプレーだと思う。

 そして前半終了間際、今度はウルグアイにFKのチャンスが訪れた。ゴールまへ大きなボールを入れ、DFカセレスがヘディングシュート。これをGKロリスがファインセーブ、続けざまにこぼれ球にDFゴディンが詰め、左足でシュートを狙ったが、すぐさまロリスが立ち上がりコースを消したことで、ボールはゴール枠を外れた。ここで1-1に追いついていたら、後半はまた違った展開になっていただろう。

 前半はむしろウルグアイペースだった。FWカバニがケガで不在の中、サイドバックから下でなく、相手中盤の上を越すボールを代わりに入ったFWストゥアニやFWスアレスに送り、そこを起点に攻撃の形をつくった。ただ、フランスは個々が落ち着いて対応していた。

 この日、1得点1アシストと大活躍のグリーズマンの存在は大きかった。攻撃では前線からスッと引いてボールを受けることで、相手DFに捕まらず、攻撃の形をつくった。その一方で自陣に戻ってウルグアイの攻撃の芽をつみ取るなど、チームに対し攻守で献身的なプレーが光った。

 また、フランスの攻撃のスイッチ役となったのがボランチのポグバ。後半16分、ボールをインターセプトすると相手をかわし、ドリブルで前へ運び、最後はグリーズマンがミドルシュートを決めた。強さと技術の高さが見えるプレーで、チームには欠かせない選手だ。

 フランスは準決勝でブラジルを破ったベルギーと対戦する。1次リーグから4試合、すべて勝利して勝ち上がってきた。ベルギーのすごいところは、走るべきタイミングで、走るべきところに選手が走っているということ。ブラジル戦の前半31分、FWルカクから始まったカウンター攻撃はその典型だ。MFデブルイネはパスを受けると前方へドリブル。その右側に味方選手がサポートに走った。そのため、ボールを持つデブルイネにブラジル選手は寄せきれず、そのままペナルティーエリア外からシュートをたたきこまれた。デブルイネがシュート以外の選択をしたとしてもゴール前で関われるように左サイドから駆け上がってきていた。日本戦で勝ち越したラストプレーもそうだった。

 短期決戦は波に左右されやすい。今大会はいいサッカーをしているチームでも落ちている。フランスも1次リーグは苦戦したが、決勝トーナメントに入ると着実に勝利を重ねている。悪い時でも悪いなりに試合をまとめられる安定感が、今のフランスの強さだろう。勢いのあるベルギーとの一戦は間違いなく面白くなる。(永井雄一郎=プロサッカー選手、元日本代表)