あと1歩だったが、その差は大きかった。日本が目指した初のベスト8。3度目の挑戦も、世界の壁にはじき飛ばされた。西野監督は世界との差について「わずかだが、すべて」と言った。壁は大きくて高い。

 メキシコは7大会連続で決勝トーナメント1回戦敗退。過去2回のベスト8は地元開催だった。アフリカの雄ナイジェリアも16強止まりのように、多くのチームが「壁」に止められた。決勝トーナメントが16チーム制になった86年メキシコ大会以降、アジア勢で1回戦を突破したのは02年日韓大会の韓国(4位)だけ。「8強」は、ほとんど欧州と南米が占めている。2大大陸以外の国にとっては、大きくて高い壁なのだ。

 とはいえ、今回はベスト8入りが見えていた。後半2点をリードしたのだから勝ちきってほしかった。内容的にも「引いて守ってカウンター狙い」ではなく、攻撃的に前に出るなど胸を張れるものだった。だからこそ勝ってほしかった。

 リードした後の戦い方、選手交代のタイミングや人選にも問題があった。90分で決着をつけるのか、延長を覚悟するのか、それも中途半端に見えた。勝つチャンスを逃した。確かに、大会前の評価からすれば「よくやった」かもしれない。それでも、1次リーグの試合を見て期待は膨らんでいた。決勝トーナメント進出ではなく、決勝トーナメントでの勝利を目指すチームの覚悟も感じていた。だからこそ、無責任に「よくやった」とは喜べない。

 02年日韓大会、日本はトルコに完敗してベスト8入りを逃した。メディアやサポーター、選手や監督でさえ、決勝トーナメント進出に満足していたのだ。日刊スポーツ評論家だったジーコ氏は「だから、勝てないんだ」と激怒した(もっとも、日本代表ジーコ監督は次大会で1次リーグを突破できなかったけれど)。

 「よくやった」もいいけれど、我々がベスト16に満足していてはいけない。なぜ勝てなかったか、何が悪かったのか、世界との差は何なのか、検証し、次につなげなければ西野監督と選手たちが頑張ってきた意味がなくなる。「代表は結果が大切」だが、それがすべてではない。結果だけで見れば、決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦負けした10年大会の方が上なのだから。

【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)