やっぱり世界の“嫌われ者”はドイツだった-。ワールドカップ・ロシア大会に向けて強豪9カ国の記者にアンケートを実施したところ、6カ国の記者が「最も対戦したくないチーム」にドイツを挙げた。前回王者であり、W杯欧州予選は10戦全勝と安定した戦いぶりを継続。突出した選手は不在ながら、さまざまな理由で難敵として警戒されている。一方、MVP予想ではネイマールとメッシが支持を分け合っている。
西ドイツ時代から何かと“敵役”だった。74年大会ではクライフ、90年にはマラドーナというスーパースターを決勝で破って、嫌われた。フィジカルの強さと「ゲルマン魂」で相手をねじ伏せていた時代は「勝利至上主義。つまらないサッカーで勝つ」と皮肉られた。前回大会はメッシの夢を打ち砕いた。
現在のドイツはパスワークも速さも、それなりの面白さもある。それでも疎まれる。「スターがいないから、戦いにくい。誰を制御していいかわからない」とベルギー誌記者。絶対的エースがいないからこそ、抑えるツボがわからず、不気味なのだ。
選手層の厚さに言及するのは英紙記者だ。「今季プレミアリーグを制したマンチェスターCの主力MFサネが、ドイツ代表では『持ち駒の1つ』にすぎないほど」。嫉妬というより、ほぼボヤき? サネはW杯欧州予選出場3試合、23人の本番メンバーから漏れてしまった。昨年コンフェデ杯は若手中心の“2軍”で優勝。「ゴレツカ、キミヒら若い選手が入って新陳代謝」と、10年大会優勝も世代交代が進まずに14年は1次リーグ敗退に終わったスペインの記者はうらやましげだ。
南米勢ではブラジルから「ドイツは合同練習が進んでいる。その点でブラジルは遅れているから、いつも苦労させられる」と組織力、アルゼンチンからは「親善試合は勝っても、W杯で勝てない(通算1勝1分け5敗)」との相性の悪さを嘆く声が届いた。
では、そのドイツが対戦したくないのは? 若きタレントの宝庫フランスだ。「最も強いと思っているから」(ミュラー記者)と、理由もド直球である。フランスはブラジルにも嫌われている。86年準々決勝、98年決勝、06年準々決勝でいずれもブラジルはフランスに敗れており「フランスはブラジルにとって靴の中の小石」と表現し、邪魔な存在だとするブラジル人記者もいる。そんな事情を知るフランス紙記者は「避けるべきはブラジル」と“しっぺ返し”を恐れている。
【9カ国の記者への質問項目】<1>MVP予想<2>自国チームの成績予想<3>優勝予想<4>最も対戦したくないチーム
▼アルゼンチン ラ・ナシオン紙アンドレス・エリセチェ記者
<1>メッシ
<2>「最低16強、目標は決勝進出」
<3>「希望はアルゼンチンだが、ドイツとスペインを忘れてはいけない」
<4>ドイツ
▼イングランド ガーディアン紙ドミニク・ファイフィールド記者
<1>デブルイネ
<2>8強
<3>ドイツ
<4>ドイツ
▼ウルグアイ デル・ソルFMマルコス・シルバ氏
<1>メッシ、ロナルド、ネイマール、スアレス
<2>「スペインかポルトガルと当たる決勝トーナメント1回戦に勝てれば勢いに乗る」
<3>ドイツ、アルゼンチン、ブラジル、スペイン
<4>ブラジルとアルゼンチン
▼スペイン マルカ紙のミゲル・アンヘル・ララ記者
<1>イスコ
<2>「8強が合否ライン。準決勝に進めば成功」
<3>ブラジル
<4>ドイツ
▼フランス ル・プログレ紙のジャン・フランソワ・ゴメス記者
<1>ネイマール、メッシ
<2>4強か8強
<3>ブラジル
<4>ブラジル
▼ポーランド ブンデスリーガ公式サイトで働くヨアンナ・コザックさん
<1>レバンドフスキ
<2>4強進出も不可能ではない
<3>「ポーランド(笑い)。ドイツ、ブラジル、スペイン」
<4>ドイツとブラジル
▼ブラジル ESPNのセルソ・ウンゼルデ氏
<1>ネイマール、メッシ、ロナルド、エムバペ
<2>最低で準決勝
<3>ブラジルとドイツの決勝戦
<4>ドイツ
▼ベルギー フットボールマガジン誌ペーター・ツキント記者
<1>ネイマール
<2>8強
<3>フランス
<4>ドイツ
▼ドイツ フリー記者ティム・ミュラー氏
<1>ネイマール、デンベレ、ウェルナー
<2>「ドイツの2連覇」
<3>同じ
<4>フランス
◆ドイツ代表のチーム事情 14年W杯後にラーム、クローゼ、ポドルスキらが代表引退も、それを埋める新戦力が台頭。控えにゴレツカ、ルディ、リュディガーらコンフェデ杯優勝組が並ぶ。故障で昨年9月から実戦を遠ざかった守護神GKノイアーが間に合うかがW杯メンバー23人選考の焦点だったが、滑り込んだ。