B組のイランは大善戦の末にスペインに0-1で敗れたが、首都テヘランのアザディ・スタジアムでのパブリックビューイングには女性ファンが詰め掛けた。イラン革命後の80年からサッカーを含む男性スポーツ大会への入場が一部の例外を除いて禁止されてきた国情。FIFAによる性差別の問題視などの方針を受け、重い扉が開かれた。イランは1勝1敗とし、25日のポルトガル戦に初の1次リーグ突破をかける。

 国際映像に映し出されたのは、カザンアリーナに詰め掛けたイラン女性サポーターの姿だった。試合中、国旗色の緑、白、赤を顔にペイントした姿が彩る。他試合に比べ「女性撮影率」が多く感じたのは、FIFAの狙いだろうか。楽しそうに声を張り上げ、堂々とカメラにアピールするさまは新たな風景だった。

 カザンから南へ約3000キロ。イランの首都テヘランでは、新たな動きが起きていた。8万4412人収容のアザディ・スタジアム、日本もワールドカップ(W杯)アジア予選で激闘を繰り広げた世界に誇る大施設。そのスタンドに38年ぶりに女性たちが座り、遠くロシアで優勝候補に食らいつく選手へ、声援を送っていた。代表の公式ツイッターも旗を広げる女性の写真を投稿した。

 79年に起きたイラン革命後、スポーツ会場で男性のののしり声を聞くことなどを警戒し、女性の観戦は許されなかった。3月、アザディ・スタジアムでの試合に忍び込もうとした35人の女性が当局に拘束され、観戦していたFIFAのインファンティーノ会長が「(ロウハーニー大統領が)女性が会場に入れるようにすると約束してくれた」と明言。この日は、3時間前に設備上の困難を理由に一時は中止が発表されたが、詰め掛けたファンの多さに、約1時間前に開放された。

 カザンでスペインに挑んだ代表は、FWも加わる徹底した守備戦術で対抗した。ケイロス監督は「相手が一部のスペースをコントロールするのは仕方がない」と割り切り、時には6バックで勝利に徹した。0-1の後半17分、FKからMFエザトラヒが得点したかに見えたが、判定はオフサイド。VARでも覆らず。その後も猛攻を仕掛けたが敗れ、初の決勝トーナメント進出は持ち越しとなった。

 90分間、ゴールに鍵をかけ続けることはできなかった。ただ、母国では1つの扉が開かれていた。