日本(FIFAランク61位)がMF本田圭佑(32=パチューカ)の3大会連続ゴールで値千金のドローに持ち込んだ。勝ち点3で並ぶセネガル(同27位)と1次リーグ第2戦で対戦。前半34分にMF乾が同点弾を決め、後半33分には乾のアシストを受けた本田が決め、2-2で引き分けた。日本は28日のポーランド(同8位)との最終戦で勝つか引き分ければ、2大会ぶりの決勝トーナメント進出が決まる。

 この大会も、やはりこの男が決めた。本田だ。後半27分にMF香川に代わりピッチに入った。1-2で迎えた後半33分。MF乾がペナルティーエリア左深く、ゴールライン手前からグラウンダーのマイナスクロスを送る。ファーサイドにポジションを取っていた本田が、冷静に左足でネットに突き刺した。ゴールが決まると、舌をぺろりと出し、FW岡崎と敬礼ポーズ。日本人選手として初の3大会連続得点で、チームに貴重な勝ち点1をもたらした。

 本田 貴士(乾)のボールがすごくいいところにきたので。外してたらまずいシーンだった。決めれてよかった。

 本田は、ここ数年で、大きく変わった。視野が広がり、一層自分自身を客観視できるようになった。ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で惨敗し、世界中に活動の幅を広げた。複数の事業を展開する会社の実質的オーナーとして、グループ企業含め120人近くの社員とその家族の存在を「ファミリー」として気に掛けるようになった。4年前までを「人間としてもまだまだ未熟で、自分が成り上がるためだけにサッカーをやってきた。そういうふうに目標設定したし、すごく自己中心的な考えでやってきた。年を重ねるごとに違うって気付くわけですよ」と表現したことがある。

 大事な初戦はベンチスタートだった。試合を前に「勝つために、やれることを全部やる。ピッチ内外、その作業はすでに始まっている」と、控えであることを受け入れたような発言もした。エゴをコントロールし、必死でチームをまとめよう、引き締めようと立ち回ってきた。ただ、一方で1度口に出した「W杯優勝」は諦めていない。主役になる、勝たせるのは自分だという強烈な自負、自信も一切失ってはいない。大会前、ごく親しい人に短いメッセージを送った。そこにはひと言、こう書いてあった。「点取ってきます」。有言実行を果たした。

 貴重な勝ち点1を積み上げたが、本田は満足はしていない。次戦のポーランド戦に向け「負けたら敗退もありえる大事な試合。そういう意味では緊張感ある。本音を言えば今日決めたかった。これがW杯の厳しさ。ポーランドの分析をしっかりして準備したい」。有言実行の男が、チームを決勝トーナメント進出に導く。【八反誠】