ワールドカップ(W杯)スイス-セルビア戦で対戦相手への「挑発行為」と取られかねないパフォーマンスをし、規律違反に問われたスイス代表、シャカとシャキリを国際サッカー連盟(FIFA)が罰金処分にとどめたことに、スイス国内では「出場停止にならず良かった」(スイス公共放送)と安堵(あんど)の声が聞かれた。

 一方、セルビアメディアは25日「信じ難い決定」(ベチェルニエ・ノボスチ紙電子版)と苦々しいトーンで報じた。

 スイス側には、2人が「これまでチームの好調に多大な貢献」(スイス紙)をし、今後の試合に欠かせない存在だとの思いがある。移民人口が増加しているスイスでは、ルーツを持つ国・地域に対する愛国心の表現に寛容な見方が多いことも背景にある。

 2人は旧ユーゴスラビア・コソボの多数派を占めるアルバニア系。2008年にコソボが一方的に宣言した独立を認めていないセルビアでは、アルバニア旗の双頭のワシを模した2人への不満は強い。独立を巡り1990年代末に悲惨な紛争を繰り広げた両国の対立が色濃く出た22日のスイス-セルビア戦では、セルビアのサポーターもブーイングなどを展開した。

 2人の出場停止を期待していたセルビア側だが、FIFAはサポーターの行為や試合後の発言などを理由に、セルビア・サッカー協会や代表チームの監督らにも罰金を科した。セルビア市民からは「西欧の正義は常にアンフェア」と恨み節が漏れた。