ワールドカップ(W杯)史上、日本代表のゴールを守ったGKは3人しかいない。川口能活(42=相模原)、楢崎正剛(42=名古屋)、そして川島永嗣(35=メッス)。今大会、失点に絡むミスをした川島に厳しい目が向けられる中、先輩の川口が自らの経験を踏まえ、励ましのエールを送った。

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 川島への風当たりが強くなっている。コロンビア戦で相手FKへの対応が遅れて失点すると、セネガル戦ではボールの処理ミスから先制点を献上した。川口は「結果的に自分は決勝トーナメントに行けなかったので、エイジにえらそうなことは言えない」。そう断った上でこう話した。

 「エイジの能力からすれば防げる失点だったかもしれない。でもそれは結果論だし、チームは負けていないし、悲観する必要はない。彼のメンタルの強さが試されていると思う。こうなった時は、信じられるのは自分であり、自分を信じて支えてくれる人。そういう人たちのために盛り返してほしい」

 98年大会から4大会連続で参加した川口は、W杯の難しさを誰よりも知る。

 「選手の夢、国を代表して戦うナショナリズム…。そこに集結する人の思い、エネルギーがすごく複雑な状況をつくる。五輪も魔物がいるとよく言われるじゃないですか。いろんなアクシデントも起こるし、一筋縄では絶対にいかない。結果もそうだし、自分のプレーもそう」

 06年のドイツ大会。初戦のオーストラリア戦は、最後の残り6分で3失点して敗れた。かなりメンタル的にダメージを受ける敗戦だった。それでもすぐに試合はやってくる。立ち直らせてくれたのは家族だった。夫人が試合後に電話で「頑張ってたじゃない。3点取られたけど、頑張っていたよ」と声をかけてくれた。川口は「その一言で救われた」。気持ちを切り替えて臨んだ6日後のクロアチア戦では、前半22分に相手のPKを止め、チームに勝ち点1をもたらした。

 そんな経験があるからこそ出た「信じられるのは自分」の言葉。ポーランド戦へ、川島への揺るぎない信頼とともに期待がこもっている。【岩田千代巳】