30年ワールドカップ(W杯)が、日中韓朝4カ国共催になる可能性が28日、浮上した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(65)と国際サッカー連盟(FIFA)のジョバンニ・インファンティノ会長(48)の会談内容が明らかになった。文大統領の日本を含む「30年W杯北東アジア4カ国」共催の要請に、同会長が前向きに検討することを示唆したという。北朝鮮の開放政策が、サッカー界にも影響した。

 28年ぶりにW杯がやってくるかもしれない。米朝会談(12日、シンガポール)で北朝鮮の核廃棄などに合意したことで、北東アジアはそれまでの緊張感から平和ムードへ、少しずつ歩み出している。その雰囲気に乗って、韓国の文大統領がFIFAへ「30年W杯北東アジア4カ国共催」を提案した。

 W杯ロシア大会F組の韓国-メキシコ戦(23日、日本時間24日0時キックオフ)の会場ロストフアリーナで、インファンティノ会長と会った文大統領は「北東アジアの国がともにW杯を開催すれば、平和的な南北関係形成に大きな力になるはず。30年W杯がその機会になることを望んでいる。FIFAが興味を示してくれることを望みます」。韓国の複数メディアの関係者によると、北東アジアの国とは、日本、中国、韓国、北朝鮮を指しているという。

 文大統領の提案にインファンティノ会長は「今の期間、(政治的に)いろんなことが起きている。今から準備しないといけない。文大統領が呼べば、いつでも韓国に行きます」と話し、さらに「サッカーの底辺拡大のため、W杯共催はいいこと。北東アジア諸国の安保、経済共同体に向けて、スポーツが交流の役割を果たせると考えている」と話した。同会長は「近々、中国を訪問し、習近平国家主席との面談で、(4カ国共催の意向を)聞いてみたい」と伝えた。

 ハードルは低くない。FIFAは、W杯開催の基本ルールとして各大陸の公平性を重視している。22年はカタール開催、26年は米国、カナダ、メキシコの共催が決定しているだけに、アジア開催となれば、欧州、南米、アフリカ連盟の理解を得る必要がある。さらに今の平和ムードが30年まで続くかも不透明。まだ日本、中国の意向は反映されてないこともネックだ。

 日本サッカー協会は、30年までにもう1度W杯招致を目標にしている。各国の協会レベルで協議すれば、実現する可能性はある。しかしW杯開催は国同士の利害関係が密に絡む。逆に、日中韓朝の4カ国が政治的に合意すれば「4カ国共催」は一気に加速化することも考えられる。平昌冬季五輪が、南北和解ムードの突破口になった実例もあるだけに、平和を望む4国が合意する可能性はある。

 30年W杯大会開催地が決まるのは、4年後にカタールで開かれるFIFA総会になるはず。インファンティノ会長は「現実的な障害は当然ある。しかし共催への強い気持ちで努力していくことが重要。文大統領のビジョンは、強烈なメッセージになったはずだ」と、慎重ながらも前向きに話した。

 

 ◆W杯日韓共催経緯 日本は89年に招致準備委員会を組織し、遅れて韓国が94年に招致委員会を組織した。95年2月に日韓両国が正式に立候補を表明し、同年9月にW杯開催提案書を提出。日韓以外の立候補はなく、一騎打ちとなった。開催国は当初、96年6月1日のFIFA臨時理事会で決まる予定だったが、同年5月30日にFIFAが日本側に共催を提案。日本が受け入れ、共催が決定した。その結果、日本開催の試合数は64から32に減り、当初15地域だった国内開催地は最終的には10地域に。本大会は32カ国が出場し、開幕戦は韓国(ソウル)、決勝は日本(横浜)で行われた。