「やった、20年ぶりの優勝だ!」。ワールドカップ(W杯)ロシア大会でフランスの優勝が決まった15日、全国が歓声に沸きたった。「自由、平等、エムバペ」…。パリのシャンゼリゼ通りや全国200カ所以上の観戦会場では、1998年の前回優勝からの20年を振り返る移民系の国民の姿が目立った。

 「喜びが長くは続かないと分かっている。ただ今日は『ありがとう』と言いたい」。数十万人が繰り出したシャンゼリゼで、失業中の男性ジャンクリストフさん(50)が涙ぐんだ。

 18世紀のフランス革命以来、国民が掲げ続けた標語「自由(リベルテ)、平等(エガリテ)、博愛(フラテルニテ)」の1つに代表のエース、エムバペの名前を代用した横断幕が街路で翻った。19歳のエムバペは父がカメルーン、母がアルジェリア出身。代表の未来に「希望」を感じさせる活躍だった。

 自国開催の98年W杯で優勝したフランスは、やはりアルジェリア系のMFジダンを中心とする「移民系チーム」だった。メディアでは「青・白・赤」の国旗になぞらえ「黒・白・アラブ」と呼ばれ、極右政党などから「外国人が多すぎる」と非難を浴びた。

 その後、極右が大統領選の決選投票に進出するなど躍進する一方、不法移民の流入は拡大。イスラム過激派のテロが相次ぎ、フランスは苦難の時代を迎えた。

 リベラシオン紙のジョフラン編集局長は社説で「20年前は移住先にフランスを『選んだ』移民らの素朴な喜びがあった」と指摘。一方、今回は「苦難を『耐え抜いた』感動を国民が分かち合っている」と論評した。