東京オリンピックに参加するブラジルU-24代表が本気だ。大会に出場する登録メンバーが18人から22人に増えたことや、所属クラブの意向などをふまえ、2日に7人の追加発表があった(6月中旬にすでに発表されていた別の3人はクラブが派遣を拒否したため辞退)。

7人はGKルコン(ヴァスコ・ダ・ガマ)、DFブルーノ・フクス(CSKAモスクワ)、DFアブネル(アトレチコ・パラナエンセ)、MFヘイニエル(ドルトムント)、MFドウグラス・アウグスト(PAOK)、FWガブリエウ・マルティネリ(アーセナル)、FWリシャルリソン(エバートン)。

中でも注目なのはプレミアリーグ・エバートンでの3シーズンで33ゴールを挙げているリシャルリソン。現在A代表のメンバーとして南米選手権でもプレーしているストライカーだ。もともと東京五輪出場に意欲的で、所属のエバートンとも自ら連絡を取り、出場の許可を勝ち取ったという。

リシャルリソンらが加わることで「ブラジルがさらに強くなった」という声は多いが、メンバーの人選だけでなく、ブラジルU-24代表は五輪への準備面でも最善を尽くす。彼らは日本へ来る直前に、22年ワールドカップ(W杯)開催地でもあるカタールで事前合宿を行う。新型コロナウイルス感染が再び拡大し、ワクチン接種も思うように進んでいない日本への入国を最大限に遅らせ、すでにバブル方式でアジア・チャンピオンズリーグやクラブW杯などを無事に成功させた実績のあるカタールで“安心、安全な”キャンプを行う予定だ。

国際サッカー連盟(FIFA)は五輪の男子サッカー競技についてはU-23(東京五輪は新型コロナウイルスのために1年延期となったためU-24)という制限をつけている。これはW杯が各国代表が戦う国際大会としては頂点にあり、五輪はその次にあたるという明確な区別をつけるためだ。

そのため五輪サッカーに対する熱意は地域ごとに違ってくる。欧州選手権がW杯と同等もしくはそれ以上の価値があると自負しているヨーロッパの国々にとって、五輪はそこまで重要な大会ではない。加えて欧州選手権と五輪は同じ年に行われるので、疲労の蓄積なども考慮し、欧州各クラブは五輪に選手を派遣したがらない傾向にある(W杯などと違い、クラブには選手を派遣する義務はない)。

一方、南米各国の五輪への本気度は欧州のそれとは比較にならない。前回16年リオ五輪では地元開催ということもあったが、優勝したブラジルのFWネイマールが感極まって涙した。欧州ビッグクラブへの移籍を目指す若手選手にとっては、実力を示す良い機会でもあり、南米のチームは目の色を変えて大会に臨んでくる。東京五輪がどのような形で開催されるのか、この期に及んでもまったく見えてこないが、本気のブラジルをぜひこの目で確かめたい。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)