サッカー日本代表MF久保建英(20)のスペイン3季目も、早いもので残り1試合で全日程が終了となる。

久保が在籍するマジョルカは15日、ホーム開催のスペインリーグ第37節ラヨ・バリェカノ戦で途中出場のアブドンが試合終了間際に奇跡的な決勝点を決めて2-1で勝利し、土壇場でカディスを順位で上回り、残留圏内の17位に浮上した。

今季序盤に2連勝を飾り、幸先の良いスタートを切ったマジョルカだったが、その後は徐々に調子を落としていき、勝利を挙げるのに苦しむ日々が続いた。またその間、久保は昨年9月に行われた所属元のレアル・マドリードとの一戦で膝に全治2カ月の重傷を負っていた。

クラブは今年3月下旬、チームがリーグ6連敗を喫し、今季初の降格圏に転落したため、ルイス・ガルシア監督の更迭を決断。残留達成を目指し、かつて日本代表監督を務めた経験豊富なメキシコ人指揮官ハビエル・アギーレを招聘(しょうへい)し、残り9節を託した。

アギーレ監督は失点を減らし、負けないことを第一目標に掲げつつ、5バックと4バックを併用し、ここまで8試合3勝1分け4敗という成績を残している。エルチェとグラナダに惨敗したが、昨季の王者アトレチコ・マドリードから勝ち点3、セビリアから勝ち点1を獲得しており、上々の結果と言えるだろう。

しかしチームが守備的な布陣で臨むことで、攻撃的な選手である久保の先発出場の機会は激減している。アギーレ監督指揮下の8試合のうち、わずか2試合しかスタメン入りできていない。さらにマジョルカがセビリアとラリョ・バリェカノ相手に、5-3-2の同じ先発メンバーで臨み、1勝1分けという素晴らしい成果を挙げているため、久保はここ2試合ベンチスタートが続いている。

残留争いの状況を見てみると、最終節を残してレバンテとアラベスの降格が決定しており、さらに降格圏内の16位グラナダ(勝ち点37)、17位マジョルカ(勝ち点36)、18位カディス(勝ち点36)のうち1チームが2部落ちとなる。

自力での残留決定が可能となっているマジョルカはアウェー開催の最終節でオサスナに勝利した場合、無条件で残留が決定する。一方、オサスナと引き分けた場合はカディスがアラベスに勝たないこと(引き分け含む)、オサスナに敗れた場合はカディスがアラベスに敗れることが残留の条件となる。

その理由は、勝ち点で並んだ場合、スペインリーグでは直接対決の結果が最優先されるためである。カディスの方がマジョルカよりもリーグ全体の得失点差で上回っているが、マジョルカはカディスに直接対決の結果で勝っているため、現在、勝ち点36で並ぶも順位が上である(カディス1-1マジョルカ、マジョルカ2-1カディス)。一方、グラナダには負けているため、勝ち点で並んだ場合、順位が下になる(グラナダ4-1マジョルカ、マジョルカ2-6グラナダ)。

また、最終節でマジョルカとカディスが引き分け、グラナダがエスパニョールに敗れると、勝ち点37で3チームが並ぶことになる。3チーム以上が勝ち点で並んだ場合、スペインリーグでは当該チーム間の対戦の勝ち点合計が最優先されるため、カディス(勝ち点2)を上回っているグラナダ(勝ち点8)とマジョルカ(勝ち点4)の残留が決定する。

スペイン紙マルカがウェブ上で「アラベス、レバンテと一緒に降格チームは?」というアンケートを実施したところ、カディスが50%、マジョルカが39%、グラナダが11%となっていた(回答約1万3000人)。

久保のスペインでのキャリアを振り返ってみると、全てのシーズンで残留争いの荒波に揉まれてきた。初年度に所属したマジョルカではコロナ禍で延期されたリーグ終盤に素晴らしいパフォーマンスを発揮して中心選手のひとりになりながらも、チームは降格の憂き目にあった。

昨季後半戦を過ごしたヘタフェでは、チームが残留争いの厳しい状況に陥ったことでボルダラス監督が守備的なプレースタイルに変更したため、久保は控えの苦しい立場が続いた。しかし第37節レバンテ戦では途中出場からチームの残留を確定させるスーパーゴールを決めて救世主となった。

再び残留争いを過ごす久保の今季もあと1試合のみ。初の長期離脱を経験し、終盤に来て先発落ちしたため、望むようなシーズンを過ごしているとは言い難いと思うが、最後の最後で昨季のような大仕事をやってのけることを期待したい。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)