ユップ・ハインケス監督のバイエルン・ミュンヘン指揮官就任にともない、宇佐美貴史が所属する2部デュッセルドルフから、コーチのペーター・ヘアマンが引き抜かれていった。ハインケス監督にとってヘアマンは自身の右腕であり、2012-13年シーズンにBミュンヘンがドイツ史上初の3冠を達成できたのも、チームを陰で支えたヘアマンがいたからだ。

 もちろんデュッセルドルフにとって、この強奪は決して喜ばしいことではない。6シーズンぶりとなる1部昇格を目指す同クラブは、現在首位を快走しており(2部第12節終了時)、そんな彼らのトレーニングは、大部分がヘアマン主導の下で行われていたのだ。

 デュッセルドルフのスポーツ担当取締役を務めるエリッヒ・ルーテメラー氏は、今回の移籍劇について、有料放送「Sky」に、こう明かしている。

 「ヘアマンが我々のところに来て、ハインケスの下で働きたいと言いだした。しかしロベルト(・シェーファー代表取締役)、フリートヘルム(・フンケル監督)、そして私の3人は、明確に反対したんだ。そしたらペーター(・ヘアマン)も、かなり怒ってしまってね」。

 「でも、不満を抱えたコーチがいるのは良くないからね」とルーテメラー氏が語ったように、最終的にはデュッセルドルフ側が譲歩する形で契約がまとまった。しかし、ドイツ一のビッグクラブも鬼ではない。デュッセルドルフのシェーファー代表取締役は大衆紙「ビルト」に対し、「契約内容については明かせない」と話したものの、同紙の調べによると、ヘアマン獲得に際しBミュンヘンがデュッセルドルフに支払った違約金は175万ユーロ(約2億3275万円)と高額だったようだ。また、仮にデュッセルドルフが1部昇格を逃してしまった場合には、“補償金”としてさらに25万ユーロ(約3325万円)が追加で支払われるという、極めて異例の付帯条項も、契約に盛り込まれているという。

 1部昇格の夢が叶えば、TV放映権料や観客数の増加により、25万ユーロよりもはるかに多くの収入が見込まれる。果たして、ヘアマンがいなくなったデュッセルドルフの運命やいかに。