国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件で、南アフリカが招致した2010年のW杯をめぐり、南ア側からFIFA元副会長側に1000万ドル(約12億円)の賄賂が渡った疑いがあることが27日、分かった。米検察の起訴資料で明らかになった。ロイター通信によると、南アのサッカー協会は賄賂授受を「根拠がない」と否定した。

 捜査を主導するニューヨークのブルックリン連邦地検は「(今回の起訴は)取り組みの端緒であり、終わりではない」と表明し、徹底捜査を宣言。スイス当局はチューリヒのFIFA本部を家宅捜索し、電子データを押収した。捜査は米欧にまたがる大掛かりな捜査に発展した。

 FIFAのブラッター会長(スイス)は27日の声明で「サッカー、ファン、FIFAにとって困難な時だ」として深刻な事態だとの認識を示した。ブラッター氏は29日の会長選で5選が確実視されてきたが、影響は必至だ。

 起訴資料などによると、南ア側からの賄賂は、起訴された14人に含まれるジャック・ワーナー元副会長(トリニダード・トバゴ)側に渡ったとされる。モロッコなどを退け南ア開催を決めた04年の理事会メンバーで、AP通信によると、27日に自国で当局に出頭し、逮捕された。米国では起訴が逮捕に先行することがある。

 米国はスイスが逮捕した現職の副会長ら7人の引き渡しを求めているが、6人が拒否している。

 起訴された14人の内訳は、南北の米大陸とカリブ海諸国を中心としたFIFA関係者計9人のほか、業者側がスポーツ関連代理店と放送会社の計5人。FIFA傘下の地域機構が管轄する国際試合をめぐり、機構幹部らが放映権やスポンサー権で便宜を図る見返りに、業者から賄賂を受け取ったとされる。

 米検察は、賄賂授受や資金洗浄などを禁じた米国の法律を適用した。

 米国外に住む外国人が起こした犯罪でも、米国の銀行が利用されたりすれば、捜査の端緒になり得るという。