レアル・マドリード(スペイン)がリバプール(イングランド)に3-1で快勝し、現行大会では初めて、前身大会を含めて4度目の3連覇を達成した。途中出場のFWガレス・ベール(28)が芸術的なオーバーヘッドシュートと無回転のロングシュートを決め、通算13度目の優勝。ジネディーヌ・ジダン監督は指揮官として大会史上初の3連覇ともなった。一方で試合後にはベールとクリスティアノ・ロナウドから退団を示唆するような発言も飛び出した。
Rマドリードの新たな記録をつくったのは、歴史にも記憶にも残るベールのスーパーゴールだった。ピッチに出てわずか3分後だった。1-1の後半19分、左クロスに反応してゴールを背に跳び上がり、左足でボールをとらえてゴール左上にたたき込んだ。観客の想像力を超える衝撃的なプレーに、スタンドも一瞬息をのみ、驚きと歓声が入り交じった。
「欧州CL決勝でベストなゴールだろう。最も大きな舞台で自分のゴールで勝ててうれしい」とベール。ジダン監督も「今日の彼は素晴らしかった」と称賛を惜しまない。ユベントスとの準々決勝でロナウドが同じようなオーバーヘッドシュートを決めた時は「私のゴールの方がよかった」と、02年決勝で自らが決めたボレー弾を引き合いに出して笑いを誘ったが、今回は「ガレス(ベール)のゴールが1番だ」。現役時代に数々の妙技を披露した名手が脱帽した。
ベールは後半38分にも30メートル近い距離から、いわゆるブレ球、ほぼ無回転のロングシュートを放ち、相手GKのファンブルを誘って追加点も奪った。文句なしのMVPだった。
指揮官の采配が当たったようにも映るが、それがベールの退団示唆にもつながった。試合後「毎週プレーしたいけど、今季はそうはならなかった。今夏に代理人とちゃんと話し合わないと」と発言。今季先発したのはリーグ戦で20試合、欧州CLでは3試合だけだった。この日も昨年決勝と同じ先発11人が起用され、ベールはベンチスタート。「がっかりだった」と悔しさは隠さず「出たらインパクトのあるプレーをしようと思い、そうできたのはよかったけど」と続けた。
昨夏には同様の状況からコロンビア代表ロドリゲスがバイエルン・ミュンヘンに移った。世界トップ選手の集団、層の厚いレアルだからこその現象だ。さらにロナウドまで試合後「レアルにいられたことは素晴らしかった。近々ファンに答えを伝える」と、去就について数日中に発表すると言い出した。ジダン監督は「何も本人と話していない。何が起こるか見てみよう」と冷静だが、栄光の後に移籍騒動や契約バトルが付きものなのも常勝軍団レアルらしい。
◆大会3連覇 92年に現行大会(CL)になって以降では初、前身大会(チャンピオンズ杯)では56~60年にレアルが5連覇、アヤックス(オランダ)が71~73年、Bミュンヘンが74~76年に達成。監督として3連覇は今回のジダン監督が初。
◆マドリード“2冠” 欧州リーグはアトレチコ・マドリードが優勝。同一年に同じ都市を本拠地とするクラブのダブル制覇は、94年のACミラン(欧州CL)インテル(UEFA杯)以来。
◆レアル・マドリード 1902年創設。スペイン1部リーグは33度、欧州チャンピオンズリーグは前身大会の5連覇を含めて13度制し、ともに最多。バルセロナとの伝統の一戦は「クラシコ」と呼ばれ、世界中が注目する。本拠地はサンティアゴ・ベルナベウ競技場。チームカラーは白。