スイス1部のFCトゥーンでプレーするDFハーフナー・ニッキ(25)がこのほど、日刊スポーツのオンラインでのインタビューに応じた。父がJリーグの名古屋グランパスなどで活躍し、日本代表GKコーチも務めたディド氏、兄が元日本代表FWハーフナー・マイク(現J2ヴァンフォーレ甲府)という身長199センチのセンターバックは16年に名古屋からオーストリア3部SVホルンに移籍し、海外挑戦をスタート。着実にステップアップしてきた。さらなる強豪クラブへの挑戦や日本代表入りを目指す。

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「やっとゼロに戻れた、という感覚です」。パソコンの画面越しに、ハーフナー・ニッキは穏やかな笑みを浮かべながら話した。ホルンから18年にスイス2部FCヴィルへ加入。そして19年5月、同1部トゥーンへの移籍を勝ち取った。「J1から始まって、また違う国で1部に入れた。ホッとはしてないけど、スタート位置に戻れた。ずっと厳しい環境にいたので。ここからまたどこまでやれるのか、自分の実力を試していきたい」と、視線は前だけを向いている。

新型コロナウイルスの脅威は当然、スイスにも及んだ。トゥーンは3月中旬から約2カ月間、全体練習ができなかった。自宅でこなすメニューも工夫するなどコンディションを落とさないよう努めた。一方で「毎日練習がなく、外にも出られないでいた。自分を鍛えるモチベーションを保つのが大変でした」と、率直な心境も語った。元NBA選手のマイケル・ジョーダンのドキュメンタリー番組を見るなどし、心に刺激を与え続けた。

3日間、ボールに触れないだけで体がうずうずした。「人生にサッカーがないのは嫌だしやめられない」。当たり前のようにサッカーと共に歩んできた人生を振り返る時間にもなった。

自粛期間中、日本国内では所属している事務所「UDN SPORTS」が「つなぐプロジェクト」と名付けた社会貢献活動を展開。海外にいながらも、活動に参加した。現在は日本の経験をトゥーンで伝えているという。「ヨーロッパでは、マスクを着用するよう言われたら『仕方なく』という部分もある。日本は、1人1人が自らマスクをして周りを手助けしたりする。それを伝えていきたい」。やらされるのではなく、自らの意思で助け合う。その日本が誇るべき精神性を再確認した。

トゥーンでも主力の座を勝ち取った。コロナの影響で中断していたリーグ戦が6月20日に再開して以降、累積警告による出場停止こそあったものの5試合中4試合に出場(7月7日現在)。チームも2位ヤングボーイズに勝利するなど、降格圏を脱して上昇気流にある。今後については「まずはスイスの強豪チームに入ること。ヤングボーイズやバーゼルなど、国内にも大きなクラブがある。そこが1番近い目標です」と話した。

名古屋時代から口にする、プレミアリーグ・アーセナルでプレーする夢も胸の奥にある。スイス1部で主力であり、日本代表も決して遠い目標ではない。「サッカー選手なら当然、目指すべき」と言い切った。「25歳になった。現実的に考えて目指せるタイミングもある。ただやるからには自分が限界と感じるまで上を目指し続けたい」。199センチと日本屈指の高さを誇る大型DFが持つ可能性は底が知れない。

【岡崎悠利】