【マドリード4日(日本時間5日)=高橋智行通信員】バルセロナに退団を通達していたFWリオネル・メッシ(33)が、一転して残留を表明した。

サッカー専門サイト「ゴール」に掲載されたインタビューの中で語った。バルセロナ一筋でプレーも、8月25日に退団の意向が大々的に報じられ、世界を驚かせていた。最終的には7億ユーロ(約875億円)という巨額な違約金が“足かせ”となり、身動きがとれなくなった。

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世界最高のスターだからこそ、自分の意志だけでは動けなかった。世界で最も稼ぐアスリートの1人であるメッシが、自分の価値を示す7億ユーロという金額の前に屈する形となった。

欧州チャンピオンズリーグでバイエルン・ミュンヘンに敗れ、シーズンが終了した後、クラブに退団の意向を伝えた。契約は来年6月末までで、今年6月10日までなら一方的に契約を解除できる条項があった。メッシ側は新型コロナウイルスの影響でシーズンが延長されたことで、この条項の有効性も延長されるべきと主張。だが、それはクラブやリーグに認められず、他クラブでプレーするためには、事実上の移籍金を意味する7億ユーロの違約金が発生する流れとなった。

「それは不可能だからクラブに残ることになった」とメッシは話す。一時は移籍バブルに沸いた欧州サッカー界だが、新型コロナウイルスの影響で今年はビッグクラブも収入減。資金力を誇る上、メッシと友好関係にあるグアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティーへの移籍が有力視されたが、話は簡単には進まなかった。

もちろん法廷闘争に持ち込む策もあった。これについてメッシは「自分に全てを与えてくれた愛するクラブなので、考えられなかった」と否定している。主要リーグの開幕まで時間がないことも一因だろう。

条件闘争のため、選手が契約切れ1年前に「退団騒動」を起こすのは珍しくない。ただ、今回のメッシはクラブの姿勢に正面から対立した。“決着”がついたとしても、わだかまりはぬぐえない。起用法や冬の移籍期間、来夏に向けて、さまざまな駆け引きが続く可能性は十分だ。

◆メッシの退団騒動の経緯 8月14日に欧州CL準々決勝でバイエルン・ミュンヘンに2-8で大敗し、シーズン終了。公式に退団の意向を伝えたと、同25日にクラブが認める。クラブへの不信感に加え、クーマン新監督が親友スアレスを戦力外にしたことが引き金とされた。マンチェスター・シティーやインテル・ミラノなどが移籍先候補に挙がり、その後、インテルは否定。ユベントスがロナウドとの「夢のコンビ結成」を狙うと報じられた。