英国政府から資産を凍結されたチェルシーのロシア人オーナー、ロマン・アブラモビッチ氏(55)が、過去に不正入札によって数十億ドルの富を築いたと、英BBCが調査報道番組で報じた。

BBCによると、アブラモビッチ氏は95年に不正入札によってロシア政府から石油企業シブネフチ(現ガスプロムネフチ)を購入。その際、支払った額は同社の評価額よりかなり安価な2億5000万ドル(約288億円)程度だったという。

アブラモビッチ氏は05年に逆に同社をロシア政府に130億ドル(約1兆5000億円)で売却した。

 

BBCの調査報道チームは、ロシア国内から持ち出されたとされる文書のコピーを入手。それによると、ロシア政府はシブネフチを巡る取引によって、27億ドル(約3110億円)を詐取された形になったという。

ロシア当局は詐欺でアブラモビッチ氏を立件しようとしたが、同氏は当時のエリツィン大統領と近い存在だった。捜査を指揮していたユーリ・スクラトフ検事総長は任務を解かれ、捜査は打ち切りになった。

スクラトフ氏はBBCの番組の中で「(捜査が打ち切られた)一連の流れは明らかに政治的なもの。私の捜査はボリス・エリツィンの家族のすぐそばまで迫っていたから」などと証言している。

アブラモビッチ氏はその後もロシアの権力周辺にいつづけた。

同氏が別の会社と組んで石油企業スラブネフチを買収しようとした際には、ライバルとみられていた中国企業関係者が入札のために訪れたモスクワで誘拐された。中国企業が入札を辞退すると、その関係者は解放されたという。中国企業はアブラモビッチ氏側の2倍の額を提示しようとしていたとみられている。

アブラモビッチ氏の弁護士はBBCに対し「(誘拐については)まったく根拠のない話で、アブラモビッチ氏はそんな出来事があったことも知らなかった」と話している。だが結果的にアブラモビッチ氏と組んだ会社だけが入札し、格安の値段でスラブネフチを買収した。