日本代表MF中村俊輔(30)が、エスパニョール(スペイン)への移籍を決めたことが20日、分かった。セルティック(スコットランド)との契約は6月末までで、古巣横浜への移籍が正式決定寸前で白紙となった後、エスパニョールとの交渉がまとまった。23日にも発表される見込み。同クラブの新本拠地コルネーチェのオープニング試合となる8月2日の親善試合リバプール戦で、スペインデビューを果たすことも決まった。欧州王者バルセロナや、大型補強で「新銀河系軍団」を目指すRマドリードとの対戦も実現する。

 スペイン行きのラストチャンスに懸けた。中村は16日、エスパニョールと交渉中のロベルト佃代理人に、電話で移籍を了承する旨を伝えた。これを受け同代理人は、18日までにクラブと手取り年俸推定1億7000万円の2年契約で合意。すぐに英国に飛び、セルティックに移籍証明書発行を依頼する旨を伝えた。

 オファーを寄せる横浜に断りを入れた後、23日にも移籍が正式発表される段取りになった。7月中旬にはチームに合流。8月2日リバプール戦で、イングランド代表MFジェラードと直接対決という豪華な「お披露目式」も決まった。

 中村は横浜在籍当時、クラブ事務所にスペイン語の派遣講師を招いたほど、長年スペイン移籍を望んでいた。だが教育環境など家族の問題や、日本代表に好コンディションで臨めるよう、いったん夢をあきらめた。横浜復帰を今月初旬までにほぼ決め、19日に移籍会見をする日程も固めた。

 同時期にエスパニョールから破格のオファーが届いた。当初手取り2億4000万円の2年契約に加え、今後4年間は中村サイドにEU(欧州連合)外枠の行使を任せるという好条件だ。中村側は2度にわたって断ったが、そのたびに再オファーされるなど、熱心に誘われた。

 中村は「これだけ(エスパニョールに)評価されたら本望」と割り切り、必死に気持ちをJリーグに切り替えていた。そんな中、転機は意外な形で訪れた。今月8日に、ロベルト佃代理人と横浜幹部の詰めの交渉が、暗礁に乗り上げた。他の進路を断った中村側に対し、横浜が年俸(推定1億5000万円)以外の条件面で、譲歩を迫ったことが原因だった。

 同代理人から事情を知らされたエスパニョールは、すぐに動いた。急きょ1人のEU外選手を違約金を払って解約。中村のためEU外選手枠を用意した。年俸が初提示額より下がったのは、この違約金のため。熱意は中村に伝わった。

 股(こ)関節痛を抱えている中村にとって、スペインリーグ開幕が8月30日と他リーグに比べて2週間ほど遅く、患部を休める時間が増えるメリットもある。さらに本来はビザ取得前にメディカルチェックが義務付けられるところを、今回は7月中旬のチーム合流直前で構わないという「VIP待遇」も勝ち得た。

 中村は24日で31歳を迎える。年齢的にも、スペインという新天地に挑戦する最後のチャンスだった。

 [2009年6月21日7時32分

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