<スペインリーグ:エスパニョール0-0ヘレス>◇27日◇コルネジャー

 【バルセロナ(スペイン)=山本孔一通信員】ボールが来ない…。エスパニョールMF中村俊輔(31)が、「消化不良」に陥った。開幕戦以来のフル出場となったが、前半はボールに触れる機会が少なく、後半も絶好の位置にいながらパスが来ないもどかしさを味わった。ボールを持てば好機を演出し、強烈なミドルシュートも放っており、最下位相手のスコアレスドローにがっくり。「やれる自信はある。ボールが来るかどうかでしょ」と悔しさをあらわにした。

 中村が両手を広げて、抗議の意思を示した。後半13分。右サイドの絶好の位置に入り、ラストパスを待った。しかしMFコロミナスは、フリーの中村を無視するかのようにターンし、込み入った中央に向けて無理にパスを送り、カットされた。普段はピッチで感情をあらわにすることのない男が「ボールをよこせ!」と言わんばかりに怒りのジェスチャー。この日を象徴する場面だった。

 中村

 やれるという感覚は全然ある。後はいいタイミングの時にボールが来なかったり、このタイミングでくれば次の次まで、と考えている時に来なくて。まったく考えてない時にいきなり預けられて。そのへんがうまくいけば…。

 後半9分にはスルーパスで絶好機をつくった。同31分には右足でシュート気味のクロスボールを送り、会場をわかせた。同40分にはゴール中央約30メートルの距離から強烈なミドル弾を放ったが、惜しくもGK正面へ。スペイン国営放送TVEのサッカー番組「エストゥディオ・エスタディオ」のベストプレーヤーに選出されたように、中村のプレーはさえていた。ただボールが思うように回って来ず、不完全燃焼に終わった。

 タムード、デラペーニャら主力が離脱し、ガジェホン、コロミナスらが定位置確保へ自己アピールに走るのが大きな原因だ。中村は「時間が解決してくれる。ネガティブに考えず、こういうのを楽しもうかな」と前向きに話したが、苦渋の胸の内ものぞかせた。「やれる自信はある。ボールがくるかどうかでしょ」。日本のキングは、もどかしさを隠せなかった。

 [2009年9月29日7時12分

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