【モスクワ16日=八反誠】CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(24)が、注目される去就について激白した。モスクワ郊外でのチーム練習後、欧州各国や日本で連日のように報じられている自身の移籍問題への質問に対し口を開いた。移籍への独自の考えと、さらなるステップアップへの熱い思いを、独特の言い回しも交えて熱く語った。

 モスクワの短い夏を照らす太陽のもと、本田が口を開いた。警棒をぶら下げ、黒い制服を着たセキュリティー2人が立ち入りを厳しく制限する郊外の練習場。汗をしたたらせ約1時間の練習を終え、私服に着替えて取材エリアに姿をみせた。

 世界の注目が集まるW杯で2得点の活躍をみせ、日本を自国開催だった02年日韓大会以来となる16強へと導いた。デンマーク戦で決めた無回転FKのインパクトは絶大で、世界の市場で「HONDA」の価値は急騰した。海外メディアではACミラン、バルセロナ、マンチェスターU、トットナムらなどのビッグネームが興味を持つと報じられた。移籍金についても、01年に中田英寿がローマからパルマに移籍した際の約33億円という日本人最高額に迫る2000万ユーロ(約22億円)という報道もある。ヒートアップする一方の現状に対し、自らの言葉で語った。

 本田

 移籍については、まだCSKAの会長とも詳しい話はしていない。一体、皆は何をもってオファーとしているのかは分からないけど、オレにとってのオファーはCSKAが設定する移籍金の全額を出すと言ってくれるクラブからの話だけ。代理人ともいろいろと話をして興味を持つクラブがあるのは聞いている。けれど、オレの中では、現状ではオファーがないというのが正直なところです。

 ロシアの超名門クラブの顔として厚遇を受け、期待を背負っている。1月に本田を獲得するためCSKAは、900万ユーロ(約9億9000万円)もの移籍金を支払った。主力としてチームのために尽くすプロとしての責任感はだれより強い。ただ、1人のサッカー選手として現状に決して満足しない男は、さらなる高みを目指している。

 当然、ビッグクラブへの移籍も選択肢として大きなウエートを占めている。世間では「若手」ともいわれる24歳で世界を驚かせ、順調な歩みを続けていると見る向きもある。南アの地元紙にも、W杯で活躍する若手10選手として特集され優勝したスペインのDFピケや3位ドイツのMFエジルら新鋭を抑えて2位にもランクされた。だが、こんな論調も真っ向から否定した。

 本田

 オレは焦っている。もう24歳。若い若いなんて思っていたら、もう引退間近ってことになる。周りには、オレのことをいい感じで成長していっていると思っている人もいるかもしれない。ただ、ここからが本当のスタート。現状は、オレの描く本田圭佑ストーリーに全然追い付いてきていない。成り上がれる時に、成り上がらないと。世界の強豪からみたら、まだまだひよっこ。上には上がいるんだとチャンピオンズリーグでもW杯でも感じた。W杯のパラグアイ戦だって、日本人かパラグアイ人じゃないと見いひんやろうなと、客観的に思ったから。

 欧州の移籍のウインドーは基本的に8月31日まで開いている。オレは成り上がってやる-。こう強く念じ続ける本田は周囲の熱狂にも、浮かれはしない。目の前の戦いに集中し、巨額のオファーを勝ち取るまで徹底して自らを追い込み続ける。(金額は推定)

 [2010年7月17日15時33分

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