後半の切れ味を生むスタミナは、過去に1度も歩型違反による失格経験がない美しさが支える。大学時代に競歩界の名コーチ内田隆幸氏に師事し、作り上げた。当時は肩に力が入る癖があった。ある日の練習。突如「練習終わったら中身を焼き卵にせえよ! 味付けしたらうまいぞ~」と生卵を渡された。それを手にトラックを歩いた。力が入ればつぶれるから、自然と肩の力を抜く感覚が身に付いた。後半も腕が振れるようになった。

 男子50キロ競歩は15年世界選手権、16年リオ五輪に続くメダル。過去2大会は、ともに銅メダルで銀メダルは日本競歩界初だった。海外メディアから東京五輪の目標を問われ、荒井は「ゴールド」と少し恥ずかしそうに笑った。【上田悠太】

 ◆荒井広宙(あらい・ひろおき)1988年(昭63)5月18日、長野県生まれ。中学で陸上部に入り、長野・中野実高2年で競歩を始める。福井工大-石川陸協-北陸亀の井ホテルを経て13年4月に自衛隊入り。16年リオ五輪男子50キロ競歩で銅メダル。世界選手権は11年から4大会連続で出場し、15年の北京大会50キロ競歩では銅メダルの谷井に次ぐ4位入賞。50キロの自己記録は3時間40分20秒。趣味はドローン。180センチ、62キロ。