日本記録保持者の大迫傑(27=ナイキ)が棄権で4度目のマラソンを終えた。東京オリンピック(五輪)出場権がかかる9月のマラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)と計20キロ以上コースが重なる仮想レースとして臨んだが、30キロ手前で走りを終えた。寒さの影響で体が動かず、順調だったマラソン人生で初の苦杯となった。次戦はMGCとなる見込み。

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体を震わせていた。日本記録を作った昨秋シカゴの歓喜の震えとは正反対。寒さに体をむしばまれレースを終えると、大迫は観客の背後の沿道で小刻みに震えた。主催者を通じて「スタート地点から寒くなって、体が動かなくなり棄権せざるを得ない状況でした」とのコメントを残した。

出発時は気温5・7度に冷たい雨。車でゴール地点に戻った後もタオルに身をくるみ、関係者に体を支えられた。報道陣に対応することなく、戦いを終えた。

17年4月のボストン、練習拠点を置く米国での初マラソンから、自己記録を伸ばしてきた。2時間10分台から7分台、そしてシカゴで5分50秒をマーク。1日の会見では目標タイムに「?」を並べ、記録より勝負を強調したが、高速コースに期待は高かった。実際、この日も2時間3分台を狙える先頭集団に位置して進めただけに、よもやの失速だった。

今日4日に予定されたイベントをキャンセルするほどの苦い経験となったが、収穫を探すなら、海外では味わえない国内の注目度を感じられたことか。マラソンへの関心が非常に高い環境下で、大本命として心身をどう調整するか。天候に苦しめられた結末も、スタート以前にどう過ごすかの経験値は積めた。教訓とし、大一番のMGCでは再び喜びに身を震わせる。【阿部健吾】