駒大が5時間11分8秒の大会新記録で6年ぶり13度目の優勝を飾った。エース田沢廉(2年)が最終8区の残り1キロ余りで猛スパート。ずっと東海大アンカー名取燎太(4年)の背中に付き、勝機をうかがった。目まぐるしく順位が変わる歴史的な大激戦を、鮮やかに一発の仕掛けで決めた。連覇を狙った東海大は2位、1月の箱根王者・青学大は4位。今季はコロナ禍で出雲駅伝が中止となり、今大会が「大学3大駅伝」の開幕戦だった。

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106・8キロの長丁場の勝負が決したのは、残り1・2キロだった。田沢は横目で、名取の顔色を確認した。その瞬間だ。蓄えていた力を一気に爆発させた。タスキをもらってから、18キロ以上はライバル校エースの背後にピタリと付き、仕掛けずに「静」を貫いていた。まさに一撃必殺のスパート。もう1段の余力も残していたが、使う必要はない。接戦に終止符を打って、何度もほえながら、フィニッシュテープを切った。

「もともと、どこで仕掛けるかの計画性はなかった。何となくで決めた。不意に仕掛けてることで、『えっ』という思いをさせたかった。それがうまくいった」と笑った。レース全体で見ても、駒大が先頭を走ったのはラスト1・2キロだけ。まさにエースの勝負強さが最たる勝因だった。57分34秒は区間賞でもあった。

偉大なOBからも影響を受ける。東京五輪マラソン代表の中村匠吾は、今も駒大が練習拠点。印象的な姿勢の1つが食生活だ。ジュースなどは控え、飲むのは水ばかりと知った。まだ同じくらいにストイックにマネできないことには苦笑いだが、「徐々に変えていこうと思う」。自然と目にできる背中を、成長の糧とする。「将来は中村選手のように五輪選手になりたい」と力強く語った。

これで「平成の常勝軍団」は、単独最多22度目の「大学3大駅伝」制覇だ。令和になって以降は初優勝。62歳の大八木弘明監督は「令和の常勝軍団を作りたい」。下級生は粒ぞろい。再び黄金時代が到来する可能性は十分だ。【上田悠太】

○…大会はコロナ対策で、例年とは違った様式だった。走り終えた選手はゴール地点ではなく、バスで名古屋方面に。ゴール後の胴上げもなし。密集を避けるため、開閉会式も実施されなかった。沿道は観戦自粛が促されていたが、応援する人の姿も一部で見られた。

◆田沢廉(たざわ・れん)2000年(平12)11月11日、青森県八戸市生まれ。青森山田高3年時にアジアジュニア選手権5000メートル銀メダル。駒大1年時は出雲3区区間2位、全日本7区区間賞、箱根3区区間3位。自己ベストは5000メートルが13分37秒28、1万メートルが28分13秒21。180センチ、61キロ。