女子800メートルで盛岡誠桜(岩手)の田中希歩(きほ、3年)が2分7秒86の自己ベストで2連覇を飾り、大会記録(2分8秒97)を20年ぶりに更新した。仙台育英(宮城)の壁谷衿奈(2年)に0秒14差で競り勝ち、9日間で7レースのハード日程を有終の美で締めくくった。4位入賞した1500メートルに続いて全国高校総体(インターハイ=8月開幕、徳島)出場が確定。

盛岡誠桜・田中は得意の800メートルで2連覇し、笑みがはじけた。自己ベストの2分7秒86で大会新。従来記録を1秒11塗り替えた。2位の仙台育英・壁谷と0秒14差の激戦。残り200メートルでラストスパートをかけると、最後は前傾姿勢でゴールラインを駆け抜け、両手を突き上げた。「2分6秒台を出したかったので、すごく悔しいです」と語り、「自己ベストを少し更新できたのは良かったですが、走り的にはまだまだでした」。岩手県高校総体でマークした2分7秒88の同県高校記録も上書きした。

満身創痍(そうい)だった。U20日本選手権の1500メートルを含めると9日から17日までの9日間で7レース目。「ラスト1本はたったの800メートルなので、自分の得意種目で優勝は譲れないという気持ちでした」。昨年10月、U18陸上800メートルで優勝。さらに今年の日本選手権の参加標準記録(2分9秒00)を突破し、気持ちに変化があった。

「自分も全国で通用する選手になっているという実感がわき、『ここまで来たなら、やっぱり頂点を狙いたい』と練習に対する姿勢が変わりました」

U18陸上で優勝する以前は夜遅くまで残って練習する習慣がなかった。それでも今冬から特に練習量が増え「負けたくない強い気持ちと(400メートルトラック)2周を同じペースで走れる力がつきました」。小学校や中学校では全国舞台に立つのがやっと。「負けてもしょうがない」という弱気な姿勢で大会に臨んでいた。しかし、現在は「一番のライバルは自分だと思っています」と言い切るほど自信に満ちあふれている。

全国総体は800メートルで優勝、1500メートル入賞を目標に掲げる。希歩(きほ)の名前には「希望に向かって歩き続ける」という願いが込められている。栄光のゴールに向けて、田中は歩みを止めない。【山田愛斗】