今大会最後のレースを終えた田中希実(豊田自動織機)は、5000メートル決勝に臨み15分19秒35の12位だった。800メートル、1500メートル、5000メートルに出場した異例の挑戦が終わった。

スローペースから入った先頭集団は、中盤から加速。遅れた田中は10位以下へと後退し、12位でゴールした。レース後はトラックに倒れ込み、疲労の大きさを感じさせた。

報道陣の取材に応じるミックスゾーンでは、涙を流していた。「昨日(のレース後)から何の涙か分からない涙がずっと出てきて、自分でもまだ答えは分からないけど(要因の)1つは結果。今までの世界陸上では収穫を得られたり、経験だけじゃなくてタイムか順位はどっちかはついてきたものだけど、今回は目に見えて分かるタイムとか順位が最後までついてこないまま終わるんじゃないかという恐怖があったんじゃないかなと思う」。

得意の1500メートルは日本人初の準決勝に進んだが、決勝には進めなかった。800メートルは予選敗退。結果に対する重圧は感じていた。

世界選手権の日本勢で、1大会で個人3種目に出場した選手はいない。前例のない挑戦の中で「結果的に入賞であったり結果が得られなくても、最後まで食らいついて負けたなら『結果より過程』と胸を張って言えたかもしれないけど、そこで途中で離れてしまったのは全部が中途半端になってしまったんじゃないかという悔しさがあります」と振り返った。

珍しく見せる涙。「今までは調子が悪くて結果が出なかったりとかで泣くことはあった。決して調子が悪いわけじゃないのに、自分の力が出し切れるか分からないという部分で涙が出てきたってのは初めてかなと思います」。

23年世界選手権ブダペスト大会、24年パリ五輪、その先の挑戦にも注目が集まる。「次は1つの種目に絞るかもしれないし、もう1回3種目でどこまでやってみるかやってみるかもしれない。そのときの自分の心の向く方に挑戦していきたい」と明言はしなかった。